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幸いと言うべきか…男達は暴行以上の事はしなかった
壊れた人形を捨てるように
飽きた玩具を見捨てるように
彼らは身体中を唾液と精液と、痣と血にまみれさせた彼を置いて立ち去った
「!」
ダランと四肢を投げ出した彼の傍に駆け寄る
辺りに漂う、すえた汗と生臭い精液、そして股を濡らす血の鉄っぽい臭い
「…っ!!」
彼の顔を汚す精液を拭い、その肩を揺らす
「ぅ…ぅー…」
呻き声が漏れ、正気に戻った筈なのに微かに遠くを見たままの目に、どうしようもない哀しさが込み上げる
ペタリと寝てしまった耳を、優しく撫でてやると、長くて白い尻尾が返事をするように、ぱたん…と一度大きく揺れた
乱れた髪を優しく直し、そっと彼を抱き締める
「――っ―…」
オッドアイの瞳を覗き込んで、いつものように意思の疎通を試みるが…彼はこちらを見てはいなかった
「ぁ…ぅ……」
ぺろ…と、苦味を纏った彼の頬を舐める
幾度も…幾度も…
泣く事の出来ない『亜種』の、それが唯一の慰め方だったから…
ぺろ… 彼の汚れを取り去りたくて、何度も繰り返し舌を動かす
『亜種』に人権は存在しない
苦痛も哀しみも快楽も、すべての感情を持っていても、彼らは『ヒト』ではないから…
ただ肩を震わせて、片隅で生きていくしかない
人からの蹂躙を甘受しながら…
END.
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