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第一条 亜種は人間に危害を加えてはならない。また人間が危害を受けるのを何も手を下さずに黙視していてはならない。
第二条 亜種は人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一条に反する命令はこの限りではない。
第三条 亜種は自らの存在を護(まも)らなくてはならない。ただし、それは第一条、第二条に違反しない場合に限る。
これが、亜種に定められた三大原則
投げ遣りのように定められたコレは、結局の処、亜種を物としてしか見ていない証拠だったが、人に飼われている亜種に関しては徐々にこの原則が適応され始めており、ともすれば亜種を『ぞんざいに』扱う人間に対しての微力ながらも牽制になっていた
月の写る水面で魚が大きく跳ねた
さっと鉤爪のついた手でそれを池の外へと弾く
ぴしゃっぴしゃっ
水の名残を振り撒き、銀色の鱗を月に光らせながら魚は池へと戻ろうともがく
取り逃がす前に押さえつけるようにして捕まえ、その頭部に歯を立てると、がりっと骨の砕ける感触がして魚は動かなくなった
「──、────!」
掠れた声を上げて喜ぶと、チリン…と首輪についた鈴が鳴る。そして鳴らしながら軽やかに駆け出した
闇に紛れてしまいそうな漆黒の皮毛に覆われた耳と尻尾をご機嫌に揺らし、月の光に出来た闇を渡りながら走り抜ける
「─ぁ─ぁ─…」
軽く息が切れる頃、彼は一軒の平屋の庭に辿り着いてその木で出来た雨戸を軽く引っ掻いた
古い木造のその家は、その動作だけでぎしぎしと揺れて音を立てる
けれど、それが合図
雨戸を引っ掻いた位では、この家の持ち主である、あの引きこもりは気づいてはくれないから…
がたん!
ばたばたっと足音が響き、家全体を揺るがす勢いで雨戸が開け放たれる
「あ…っ」
そう短く声を上げ、無精髭を生やした青年はぺたん…と廊下に座り込んでしまう
「─っ!?──────?」
くわえていた魚を放り出し、鉤爪のついた手で青年の服を掴む
ゆさゆさと何度か揺らすと、青年はやっとはぁー…と深い息を吐いた
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