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『コレ、俺のじーちゃんなんだ』  チリッと脳裏で鳴った言葉は、昔にこいつが教えてくれたことだ。  再び動き出した筆の音と、じっとキャンバスを見る横顔を眺める。  銅像の手が驚く程、馴染んだように思えたのは、オレの手を引き続けてくれたこいつのせいかもしれない。  どんな時も突き放さず、傍らにいて見守ってくれた… 「これ片したら飯食いに行く?」  オレの態度が気にかかったのか、作業の手を止めてチラリと見上げてくる。 「ん、行こっか」  どんな時も、こいつはオレを見てくれている。  だから、  ――――きっと、次に手を伸ばした先にあるのは、こいつの手に違いないだろう。 END.

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