64 / 205

.

「ど、どうし……」 「世の中春やで?」  いや、それは重々しょーちですけども。 「う  浮かれるって話です?」 「そやのうて。そこらへんがアオカンで溢れる季節やってことや」 「は? はぁ?」  少し山に入ったトコとは言っても、真昼間から堂々と露出やわかめ酒ややってる自分たちのような奴が沢山いるものなの? 「見てみ」  ご機嫌なままの師匠はにやにやと、よくわかってないオレに示すように指を立てた。  そこには、一輪の桜の花。 「はぇ?」 「そこも」  促されるままに上を仰ぐと、広く広く伸ばされた桜の枝が覆いかぶさっている。  空の広さもこの桜の笠でわずかに見えるだけだ。  もちろん、そこにアオカンしているカップルなんているわけもなく…… 「要は、花ちゅうんは性器や」 「えっ」  おしべとめしべがあるくらいオレだって知ってる。  知ってるけどー…… 「この花がセックスしてタネ作るんやろ?」  くつ と意地悪そうに低く笑うと師匠は花を摘まんでその中心をぺろりと舐めた。 「   っ」 「さしずめフェラか?」  さっき師匠にされたことを思い出させる言葉に思わず飛び跳ねる。  くるくる変わる表情でからかうように突飛なことばかり言う師匠に、正直オレはどうしていいのかわかんない。 「それを言っちゃうなら、花見は乱交視姦?」  ひょいっといきなり覗き込まれて飛び跳ねた。 「わぁぁぁぁぁっ」 「あんたらねぇ、人んちの庭でナニしてるの」  呆れ返った口調ではあるものの、焦る様子も恥ずかしがる様子もない。 「邪魔しとんで」 「してるでじゃないでしょうが」  そう言い返すも師匠を怒るとかそう言うのは一切なくて、よいしょと言いながら傍に座り込んだ。 「もー、メイドが腰抜かすんだから真昼間からは止めなさいよ」 「うるさいわ」 「俺は花を堪能してるけどね」  ふぇ!?  桜の枝を眺める延長でオレの方に視線をやる。

ともだちにシェアしよう!