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「君が起きないからだよ」 「年寄みたいに朝が早い訳ではないので」  壁掛け時計を確認する横顔は石膏像のようで  そのまま止まっていてはくれやしないかと乞い願う 「ねぇ―――共に死のう」  そう囁いて長い指を絡め取った  皺の寄った醜いそれと、君の張りのある指とでは不釣り合いすぎて、泣きそうになる  ―――共に死のう 「いいですよ」  まるで雨が天から降るように決まった答えが今日も返る 「―――貴方を看取ってからなら」  触れる唇から零れるそれが、嘘ではないのは知っている  なぜなら、  こちらを見返す君の瞳に映った僕は、  とても穏やかな顔で笑っているから…

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