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「どうして生まれ変わっちまったのかな」  狛猫の霊として、砕けた体ともどもなくなってしまえれば…  動かない銅像の彼をこんなに愛おしく、苦しく、切なく見上げる事もなかったのに。  そっとその足元に触れる。  そこに小さな傷があるのは、月夜の晩に二人でここを抜け出して花畑を駆け回っていた時にできたものだ。  オレが落ちている硝子片に気付かなかったから、彼が咄嗟に身を挺して庇ってくれた。  常に二人でお役目をこなして、ちらりと目が合えばお互いに微笑む合図がくすぐったかった。  どうして?  オレだけが?  もしかしたら彼はオレを見ているのかもしれないが、ただの人間のオレにはそれを感じる事なんかできなくて、泣きそうになりながら見上げるので精いっぱいだ。 「オレだよ?」  聞こえてる?  今も、月夜にはここを抜け出してる?  オレの事を思い出してくれたり、する? 「そこにいるの?」  何度目の問い掛けなんて覚えてないけど答えはいつもないままで… 「――――いるよ」  耳を打つ声は、風なんかじゃない。  現に銅像の足に置いたオレの手に重ねられたのは人の手だ。 「え、ぁ? あ?」 「なに、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してるの?」  像の向こう、ちらりと視線が合えば、その双眸は嬉しげに細められた。  ――――誰、とは聞かない。  オレを掴む手の甲に残された傷が何よりの証だから…

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