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オレの好きな、あの笑顔だ。
ほんわかした気分にさせてくれる。
「そろそろ、終わるよ」
告げられた言葉を、オレは一瞬疑った。
後悔はしていない、筈だった。
けれどきっと太陽はこのままで、世界は闇のままなんだ…と唇を噛み締めた瞬間、日野の顔がふ…と照らされた。
「うわっ眩しっ」
目を細める。
その顔がゆっくりと光に照らされ、滑らかな頬を、長いまつげを、緩やかに風になびく髪を現していく。
目を射た光に、瞼を下ろす。
光?
光だ。
少し涼しげになっていた気温が、急に暑くなったような気がした。
「な?言った通りだろ?」
太陽が現れて当然と言うその顔に、ポロリと笑みが漏れた。
ああ、そうだ。
日食は天体ショーで、『岡田将晴』は『日野真唯人』の事が好きで
『天野祝』、あんたの怯えは杞憂に終わるんだ。
これからも、ずっとずっと…日野が言うように…
天が廻って、世界を覆う日食なんてものはあっという間に終わって…
罰も罪もない…そんな世の中になったんだから…
ゆっくり、この世紀の天体ショーとやらを楽しんだらいい。
END.
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