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 ガタガタっと音がして、岡田が帰ってきたのが分かった。 「おかーえ……り…?」  仏頂面が二つ、狭い玄関にひしめき合っている。 「いらっしゃい。どうしたの?衛人は会社じゃ…」 「今日は休みなんだよ」 「そう。将晴、ご飯出来てるよ」 「あ、うん、貰う」 「てめっふざけんなよ!何、兄貴に飯作らせてんだよ!」  社会人が大学生に向かって怒鳴るって言う大人げない光景に溜息を吐いて、オレは味噌汁を温めに台所に戻る。  魚、余分に買っててよかったぁ~ 「っつーか、邪魔なんだよ!どけよ!」 「うっせ!お前がどけ!」  …  なんでこの二人ってこんなに仲が悪いんだろ…  やれやれ。    岡田とは、岡田が高校を卒業してから同棲を始めた。  互いの親にはルームシェアだと言ってあるが…どうやら衛人はオレ達の関係に気付いたらしい。  やっぱり偏見があるのかな…  事ある毎に岡田と衝突して、喧嘩ばっかりしてる。  仲良くしてくれると…嬉しいのに… 「てめっ!兄貴の横に座るな!」 「お前は玄関行け!玄関っ!」  …男同士だけどさ……オレ達はずっと思い合って、やっと実ってこうして共に歩めてるんだから…祝福しろとまでは言わないけど、せめて認めて欲しいな。  ばんっ…と机が叩かれて、コップに入ったお茶が零れた。 「もーいい!!兄貴!はっきりさせろ!」 「先に布巾取りに行っていい?」 「あー。俺行く。もー、いい年してんだから迷惑考えろよな」 「うっ…」  台所に向かう岡田を悔しげに見やって、衛人がオレを睨んだ。  幼い頃から「お兄ちゃん大好き!」と絡んできた弟にそんなふうに睨まれるなんて思いもよらず…  ずきっと胸が痛む。 「俺とあいつと!どっちを取るんだっ!!」 「将晴」 「即答!?」 「うん。まぁね~」 「なんでだよっ!」 「え?衛人は家族だけど、将晴は恋人だから?」 「わっかんねーっ!!」  もう一度ばんっと机を叩いた衛人の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 「衛人とは絶対に切れないってことだよ」  そう言ってやると、怒りの顔が真っ赤になって俯いてしまった。 「じゃ、じゃあ…あいつとは別れるってこ…―――――あだっ!」  がこん…と当たったお茶のペットボトルに悶絶する衛人を蹴り転がし、岡田が布巾で机を拭く。 「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ」 「別れる予定ないからね」 「っ……ちくしょ―――――――っ!!お前なんか認めないからな――――っ!」 「衛人!?」  弟が泣きながら飛び出していくのはいつもの事だから、もう放置だな。 「あいつの分の魚、貰うぞ」 「うん。……いつか、さ。衛人に男同士でも認めてもらえたら…いいね」  決してオープンではないけれど…大好きな弟には…認めて欲しい。 「いや、あいつが俺を嫌ってるのは男だからじゃないと思うぞ」 「え?…じゃあなんでだろ…」  そう言うと、岡田は頭が痛そうに眉間に皺を寄せながら魚を口に放り込んだ。 END.

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