154 / 205
.
やっと二人の生活に馴染んできたところだったのに…
「…大丈夫。オレは、離れないから…」
そう呟く岡田の目の中に、『天野祝』のあの瞬間の決意を見た気がしてさらに涙があふれた。
「ぎゅって…お願い……」
もし、そうなったとしても…
今度こそは…
生きていて欲しい
様々な検査をし、診察室に通される。
仏頂面の医者がカルテを見ながら切り出した──
結果。
思わず岡田に飛び蹴りを喰らわしてしまったのは…元気な証拠だと思いたい。
岡田を診てくれた医者は正気に戻っておろおろするオレに「よくあることなのでお気になさらず」と何も聞かずに大人な対応をしてくれた。
「ひっでぇっ!!」
背中に湿布。
頬に絆創膏を貼った岡田が睨むが知ったこっちゃない。
「ふーんだ」
「前に座ってたばーさん、高血圧だって言ってたのに…大丈夫だったかなぁ」
ぶつぶつ…と言う岡田にそっぽを向く。
『ターボ心臓ですね』
医者はそう、聞きなれない言葉を口にした。
戸惑うオレに、医者は繰り返し「激しい運動はしていないか」と尋ねてきた。
アスリートなどに多い状態で、運動等により限界まで収縮した心臓がもう一度収縮を見せる状態を言うらしく…
今回、それが雑音に聞こえたのだそうだ。
医者に繰り返し聞かれた「激しい運動」と言うのは…
「心配したのに…」
岡田が原因の…アレ……だ。
思い当った瞬間真っ赤になったオレに、医者が何を思ったのかは知らないが……「無理されませんように」と言った医者は何かを勘付いているようだった。
「原因に心配されたって…っ」
ちゅっとキスが落とされる。
「まぁ幸い、心臓は丈夫だって分かったからいいんじゃないか?」
…うん。
まぁ…
そうなんだけどさ……
お陰で今回は、長く君と一緒にいる事が出来そうだよ…
END.
ともだちにシェアしよう!