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 オレは再び頭を深く垂れ、彼の足元へと頭を摺り寄せる。 「わん」 「うるさい、無駄咆えすんな」  彼が部屋へと上がると、ゴールデンレトリバーが彼に飛び掛る。その前足を肩に掛け、その顔を舐め回す。  彼の手が、優しく金の毛皮を撫でていく。  ―――――羨ましい 「よしよし、水飲むか?今やるからな」  彼はこちらを見ない。  犬もこちらを見ない。  彼がオレを呼ぶまで、その場で邪魔にならないように蹲る。 「ブラッシングしてやろうな」  彼が立ち上がった隙に、犬がこちらを向く。オレを見る犬の目に嘲りを見て、体中が総毛立った。  ―――――ああ、気持ちいい  床に頭を擦りつけながら、声を立てないように笑う。  犬はもう、オレの言う事を聞かない… END.

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