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 犬は、もうオレの言うことを聞かない。  無理矢理犬を家に押し込むと、観念したのか渋々寝床の方へと引っ込んだ。  それを見届けて服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になって上がり口のマットの上に正座をする。  それが、彼を待つためのスタイル……  …カツ  …カツ  彼の立てる靴音が扉の向こうから聞こえ始めると、オレは深く頭を垂れて蹲る。    …カツ  …カツリ…  扉の前で足音が止まり、ゆっくりと扉が開いて彼が入ってくる。  オレは、許されてもいないのに顔を上げて彼を仰ぎ見た。  涼しげな目元に、酷薄そうな笑みを浮かべて、汚い物を見るようにこちらを見下ろす。 「誰が顔を上げていいって言った、この駄犬」  靴で蹴られて、  ―――――嬉しい

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