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 薄闇に沈み始めた公園で、今日も彼は読書に耽る。  平日の夕方、頭上の街灯が灯るまで、彼は毎日そのベンチに座って静かにページを捲っていた。  生真面目そうな端整な横顔に、少年らしいスリムな体つき。ほっそりとしたうなじを見せつけるように、やや俯き加減で姿勢良く座っている。 「彼にしよう」  そう男は呟いて歩き出した。  ここ最近、犬の散歩をするフリをしてずっと物色していたが、彼ほど好みに合う獲物は他に見当たらない。  薄闇が、闇に変わり始める。  人の姿が、途切れた。  街灯に照らされて、さながら舞台のワンシーンの様にスポットライトに照らされた彼に向かって、男は犬を放つ。 「ワンッ!」  男が躾けていた通り、犬は彼に向かって飛び掛る。 「え!?」  いきなり飛び付いていたゴールデンレトリバーに驚き、彼はバサッと地面に読みかけの本を落とす。 「ぅ…あはっ!お前、なんだ?こらっ舐めるなよ」  元々大型の犬種だったが、男の連れている犬はその中でも大きい体格をしていた。  そんな犬に顔を舐められて笑う彼の声は、声変わりがまだ終わっていないのか、微かに掠れている。  それがまた、扇情的だった。 「うちの犬がごめんね」  男がわざとらしくそう言いながら近付くと、彼は犬を撫でながら首を振った。 「いえ、大丈夫です。可愛いですね、大きな犬」 「なかなか言う事を聞かなくて…」 「犬の躾って難しそうですよね」  リードを引いて犬を離すと、彼は名残惜しそうな表情で足元の本を拾おうと身を屈めた。  ぎゅ…と右手の懐中電灯を握る手に力を込める。 「いいなぁ、僕も大きな犬が飼いたくて……ぁっ!!」  バチバチっと音を立てる懐中電灯を彼の首筋に押し付けると、本を拾おうと屈んでいた彼の体がビクンと跳ねて硬直し、その後ぐったりと弛緩した。  彼を抱き留め、緊張でぶるぶると震える手から、放電を終えた懐中電灯を放り出す。 「ふ…ふふ…」  腕の中で苦悶の表情で目を閉じる彼の艶っぽさに、ほくそ笑む。  やっと手に入れた…俺のペット…

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