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bluebird 5
お前に見捨てられたと思って絶望した……なんて。
恥ずかしさを誤魔化すために、掌で包み込むようにして持っていたホットミルクをすする。
「えっと…ごめん、なんか吐きたくなってさ、トイレ探してたんだ」
「吐くのになんで遊具ん中入るんだよっ!」
ぐいっと押すように体当たりをされて……
いい言い訳が出てこなくて唇を曲げる。
「お前が見つからなくて、俺がどれだけ心配したと思ってるんだ!」
鬼 なんて表現してしまったけれど、それは友人のオレを心配する心が素直に表に出てしまっているだけで、それは決して嫌なものじゃない。
ちら ちら と盗み見るように友人の横顔を見続けると、やがて友人の眉がムズムズし始めて眉間に深い皺を作る。
「っっっ !わかった!わかったよ!お前は吐くためにあそこに行ったんだっ!だからそうやって見ないでくれ!」
絶対嘘だってわかっているのにその言葉を飲み込んで、友人はそう納得したようだった。
「 ────もう、心配させないでくれよ」
溜め息にも似た言葉に、
「じゃあ傍で見張っててよ」
そうちょっと子供がすねるような口調で言ってやると、こちらを向いた目が大袈裟なほど見開かれて……
「あの、さ」
ちょいちょい と指先で促されて、カップを置いてその手を握る。
オレの体が冷えていたからってだけじゃない、びっくりしてしまうほど熱い掌に両手が包まれて、
「公園で言った言葉、覚えてる?」
「…………うん」
「俺、泣かすようなことしないから」
強まる力が緊張を伝える。
何言ってんだと茶化そうとしたオレの言葉を押しとどめたのは、視線がまっすぐオレを見ているからだ。
「……うん」
「よそ見、しないし」
なんたって、小さい時からお前しか見てないんだから……と続いた言葉に、息が止まりそうだった。
「俺が、恋愛対象に入らないのは分かってるんだけどさ。それだけは覚えてて」
「……ん」
はっきりとした返事ではなかったのに、オレを見下ろす目は満足そうだ。
こいつはずっと、オレの近くで、どんな想いでオレを見ていたのかと考えながら、友人の肩に体重を預ける。
恋愛対象に入る入らないは、実はまだ良くわからないけれど、でも友人に背を向けられた時の悲しさとか辛さとかを考えてしまうと……
オレが友人の手を取るのは案外近い話なんじゃないかなって感じながら、温かい体温にほっと息を吐いた。
END.
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