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bluebird 4

 恋人に振られるよりも、友人に手を振り払われたことの方がショックなのはどうしてだ? 「……あいつの口から、  」  壁から頭をもたげると、ずっと壁に触れていた耳朶が一瞬焼けたのではないかと錯覚するような痛みが走る。  痛さで飛び上がってもいいはずなのに、吐き出した白い息を置き去りにして体がゆっくりと傾いでいく。  コンクリートの壁よりも、剥き出しの土の方が温かいのだとその時初めて知った。  頬に当たる地面から土臭い臭いが漂って、いつもあいつと遊び回った記憶だけが鮮明だった。  痛みと言うよりは衝撃に驚いて目を開けると、青い顔をした友人が二発目の張り手を決めようと右手を振り被ったところで、慌てて首を振って見せたために辛うじて二発目を貰うことはなかった。  オレがガチガチと歯を鳴らす姿を見て、友人はコートの前を広げてオレの上へと倒れ込んでくる。  小さな遊具の中はオレ達二人が入るとぎゅうぎゅうで、大柄な友人がどうやって中に入れたのか なんて呑気なことが頭を過ぎった。 「な、  な、なに、してんだよっ‼」  ぎゅうっと抱き締められたせいか肺の中の空気が押し出されて、苦しくて仕方がないのにオレに覆い被さる温もりはどこまでも温かかい。  かじかんだ手をその背中に回してしがみつくと、友人の体がぶるぶると震えて小さな嗚咽が上がる。 「タクシー 呼んでくるって言ったのにっなん でっ、待っててくれないんだよっ!」 「  だ、て、お前が、  」  手を振り払ったから、 「死んじまいたくなるくらい!そんなにあんな奴のことが好きだったのかよっ⁉お前を泣かせるだけの っあんなやつよりっ」  涙のせいで鼻声な友人の声はぼやけて聞き取りづらくて、息を詰めるようにして続く言葉を待つ。 「絶対に俺の方が好きなのにっ!」  叫ばれた言葉はドームの中に響いて……  毛布を被ってソファーにうずくまるオレにホットミルクを手渡して、友人は隣へと腰を降ろして自分もそろりと熱いコーヒーに口をつける。  傍らに来られて雰囲気がどんよりと重苦しいのは、友人の怒りのせいだ。 「……本当に、死のうとか思ってたわけじゃないんだって、ただ  」  お前に手を振り払われて寂しかった なんて言葉に出来なくて、鬼の形相のままの友人の前でしおらしく身を縮めるしかできない。

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