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bluebird 3
四方八方に子供が中に入れるようにと開けられた穴のせいで丸見えで、どこをどう見ても秘密基地には適さないのに、なぜだかオレ達にとってはそこは外から隔絶されたとびきり謎めいた空間だった。
開いている穴は小さいけれど、今のオレが入れないことはない大きさで……
誘惑に負けた と言う程ではないけれど、グラグラと揺れる頭ではそこに入ることがとても面白いものだと信じて疑うことができなかった。
「ここで……えっと……」
遊具の中は土の地面があるだけで、子供が残した玩具もなければゴミの一つもなく、なんとも言えないがらんどうの空虚なものだった。
はぁと吐き出した息がぼわんと響いて耳に残る。
外なのに内で、内にいるのに穴だらけのそこは限りなく外だ。
そんな場所で、内緒話をたくさんした記憶がある。
そこで、友人は何を言ったんだっけ?
細かい部分を思い出そうとする度にアルコールが脳の奥を揺さぶり、思い 出そうとしたことが思い出せずに苛々としながら気だるい体をドームの中に下ろした。
足を伸ばせばもう少しで向かい側についてしまいそうな、そんな小さなドームに背を預けて単調に続く雪の降る様を視界から追い出すために目を閉じる。
芯まで冷えたコンクリートは触れると熱いと思えるほどで、ほんのわずかだけ思考が戻った。
「ああ、そうだ。えっと」
────好きな奴とか、いる?
────うん、ずっと好きな奴、いる
あの当時は、まだ恋愛事の「れ」の字も良くわからなかったし、周りから聞こえてくるからってだけで聞いてはみたものの、オレには……オレ達には遠い話だと思っていたからびっくりして、急に大人びたふうに見えた友人の返事に乗ることもせずに「あっそ」って返した。
肩透かしを食らったように友人はぽかんとして会話が途切れてしまって、幼心に禁忌の会話をしてしまった焦燥でどきどきしていたオレは友人がこれ以上何も言い出さないのを幸いと、それに興味のない振りをして耳を塞いだ。
ちょうど、周りはちょっとそう言うことで色めき立つ年頃で。
友人もそんなふうな話に夢中になってオレとは遊ばなくなるのかなって思ったら、ものすごく嫌で、嫌で、いやで……
「いや、だったのは、 どうしてだ?」
穴から吹き込み、睫毛に降り積もった雪が解けて目に滲む。
どうして?
なぜ?
オレはあいつが恋愛の話題を出すのを嫌がったんだろう?
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