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bluebird 2
寒い 寒い と思っていたけれど、とうとう降り出したらしい。
恋人に振られ、
友人に逃げられ、
雪に降られ、
はぁーっと息を吐くと酒臭い白いもやが立ち上る。
手を天に向けて突き出すと、何も掴むことのできなかった指の間にふわふわと雪が絡まり、冷たいと思う間もなくあっと言う間に溶けて雫となって伝い落ちた。
なんてことはない、当然のことなのに、何にもなれずに消えてしまった物悲しさに鼻の奥がツンと痛んで視界が滲む。
「 どこ、行ったんだよ 」
柔らかにオレの心を押しつぶそうとしているかのような雪に追われるように、酔っぱらいだと全身で表現できる足取りでふらりふらりと歩き出す。
友人がどこに行ったのかわからないオレには目的地なんてなくて、ただただ酔いの醒めない頭でよたりよたりと彷徨うと、ふとやった視線の先に木々の切れ目があってその向こうに、夜目にも鮮やかに映る赤い遊具が見えた。
黄色と青に塗られた滑り台、風に微かに揺れるブランコ、それから赤いドーム。
何を思ったのか思い出せないけれど、その赤さはオレの動きを止めるには十分で……
「 小さい頃、あいつと遊んだ遊具と同じだな 」
友人とは古くからの付き合いで、 小さな頃は泥だらけになって朝から晩まで公園で遊んでいた。
今思えば遊具の少ない、面白みも何もないような小さな公園だったのに、あいつと二人で遊んでいたら毎日が楽しくて楽しくて、飽きると言うことを知らなかった。
「 ────っ」
びゅうぅっと一際強く吹いた風に思わずよろける。
「……なんで、あいつとのことばかり思い出すのかなぁ」
恋人の顔を思い出そうとしても、吹く風に消えてしまうくらいの記憶しかない。
あんなに真っ直ぐに見ていたはずなのに、
いつの間にか、殴られることが怖くて、
いつの間にか、別れ話をされるのが怖くて、
傍に居てもずっと俯いていたように思える。
だからなのか、昼間に罵りながらオレを捨てた恋人の思い出よりも、ずっと昔に友人と遊んだ記憶の方が鮮明だった。
コンクリで出来た大きな滑り台を逆走して、ブランコではどちらが高くまで漕げるか競争をして、コンクリートでできた円い穴の開いた遊具を秘密基地にして遅くまで遊んだ。
一日中駆けずり回って、喧嘩もして、仲直りもした。
腐れ縁だと笑いながら大学も一緒で安堵して……
「こんな小さかったか?」
塗装は思い出の色と違ったけれど、秘密基地だと騒ぎながら立てこもった遊具は思い出の中よりもずいぶんコンパクトなサイズだ。
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