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君をひとりじめしたい 1

 二人で毎日通った桜並木を走り抜ける。  春なら桜が満開で、遠くまで霞ががるような幻想的な道なんだけど、残念ながら今は虫食いの茶色く色づいた葉が風が吹く度に寂しげに舞い落ちるだけの道だ。  道のそこここに吹き溜まっている葉を蹴散らしながら駆けていると、毎日毎日幼馴染と歩き続けたこの道がぐんぐんと後ろへと流れて行って……  弾む息を整えもしないで一心に足を動かしていると、桜並木の切れる手前に二人の人影を見つけて飛び掛かった。  隣の家に越してきたそいつと初めて会った時、そいつは母親の後ろに隠れて出ては来なくて、もじもじと効果音が聞こえてきそうなほど肩をすくめて、ちらちらとこちらを見る姿にオレが感じたのは「変なヤツ」だった。  実際は変なヤツって言うよりはどんくさいヤツで、人見知りだし、要領悪いし、天然でとり頭のせいかすぐに何でもかんでも忘れてしまうし、人見知りの癖におせっかいだからしょっちゅうしょっちゅう厄介な問題に巻き込まれて、泣きながら頼ってくるような、そんなヤツ。  幼稚園の砂場では気に入りの赤いスコップで遊べないと泣き、  小学校ではクラス対抗じゃんけん大会で一勝もできないと泣き、  中学校では体育大会の学年ダンスが覚えられないと泣き、  高校では……オレと同じ大学に進学できないと泣き喚いた。  そんなこと言ってもしょうがないもんはしょうがないし、大学が違ったからってオレ達の腐れ縁がどうにかなるとは思えなかったし、住む場所を考えれば別に……  なんなら同じアパートか、それかルームシェアとかって手もあるんだし。 「大好きなんだねー」 「えっ」 「幼馴染って言ったって、普通そこまではないよ?ないない」  同じ部屋に住んだらいいんじゃないかと考えていると、クラスの女子と話している時にぽろりと漏らしたらそんなことを言われて……  いや、だってあいつ泣き虫だし。  オレがいないと遅刻するし。  オレが引っ張ってやらないと迷子になるし。  ……オレが面倒見てやらないと、生きていけないに決まってるし。 「幼馴染の面倒を見るのはオレの役目だろ!」 「えー?そこまでするぅ?」  ケラケラと笑われて唇をひん曲げると、校則違反のピンクのつやつやとした指先がぴっと鼻先に突きつけられる。

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