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君をひとりじめしたい 5
飛び起きるくらいってことは、やっぱり興味があるのかなって思って。
「た、例えばだよ」
「たた ……例えばね、うん、えっと 」
自分の部屋なんだから今更物珍しいものもないだろうに、きょときょととあちこちを見回してから、それでも考えがまとまらなかったのか小さく呻いてうずくまった。
「人によるかな」
「人に……」
それはどうとったらいいのかなって悩ましい所だけど……
「そっちは?好き 「えええっ⁉」 って言われたら?付き合ったりする?」
さっきしたのと同じ質問をされて、今度はオレが飛び上がる。
尋ねられたんだから返事してって思うのに、なんて答えたらいいのかわからなくてちらちらと隣を盗み見た。
いつもへらへらしているのに、なぜだか今は凄く真剣な顔をしてオレを食い入るように見ているから、いろんな言葉がぐるぐるぐるぐる頭の中を回っちゃって……
「告白してきたのがどんくさくて人見知りで要領悪くて天然でとり頭でおせっかいでびーびー泣いてほっとけない奴なら付き合うっ」
一気に言って深呼吸する。
「そ そんな具体的って、…………好きな人、いるの?」
「い、い、いるよっ!」
小さな部屋にはオレの声は大きすぎて、自分自身で耳を塞いでしまいたくなるくらいだった。
「いい匂いして柔らかくてあったかくてっ守ってあげなきゃって、助けてあげなきゃって思うヤツ」
オレの言葉を追いかけるように、爪をぷちぷち鳴らす音が続く。
なんか返事貰えるかなって期待してたんだけど、隣は喋り出す気配どころか動き出す気配もない。
「えっと 」
「 っ」
声を上げずに、た た って涙を落として泣くのがこいつの泣き方で、あんまりにも静かに泣くから……
「えっな、なんで⁉どこに泣く要素あったんだよ!」
「だ、だって、……君の隣は僕のなのに 」
ず と鼻をすすって泣くのを堪えようとするけれど、そんなことで泣き虫のこいつが泣き止むわけないってのはオレが一番知っている。
「何言ってんだよ、まだそんな、告ってもいないのに」
そう言うと、一瞬動きを止めたあとに更に大粒の涙を流し始めて……
「こ、告るんだ 」
「告るわけじゃないよ」
「違うの?」
「あ、や、やっぱ告るっ!だからさ 」
流れ落ちる涙で濡れた手をちょいちょいとつついて促すと、しゃくりあげる合間に縋りつくように手を伸ばしてくるから、力を込めてぎゅっと握った。
あったかくて、馴染む感触どっと心臓が脈打つ。
今まで手を握ったことなんか数えきれないくらいあるって言うのに。
「 ────だから、好き なんだけど」
ぱちんて瞬いた目からは涙は止まったけど、息も止まっちゃってるから大慌てで肩を揺さぶらなきゃいけなくなった。
「息!息して!ほら、すーはーすーはー」
「す すー……すー……」
「吸うばっかりじゃダメだって」
ちゃんと呼吸するように世話を焼きながら、告白を受け入れてくれたら今度はルームシェアの話をしないとなって思った。
END.
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