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君をひとりじめしたい 4

 ちょっと嘘をついたりとか嫌なのに言い出せない時とか、そんなタイミングで出る癖だったから僕は苦笑いをして抱き締めたままの腕を叩いた。 「地面冷たいよ」 「あっごめっ  だって、だってさ」  立ち上がって枯れ葉とか土を払っていると、 「────だけど」  って中途半端に彼女の声が聞こえた。  どうしてちゃんと聞き取れなかったのかって言うと、耳を塞がれてしまっているからで…… 「っっっ  ヒドイっ!さいってーっ!」  いつも取り澄ましたような彼女の顔がくしゃっと歪んで、それから思いっきりバコン って!  彼もろとも鞄で叩かれて、何が何だかわからないままに僕達はまた地面へとうずくまる羽目になった。    ◇   ◇   ◇  オレはベッドの上で、気まずくて気まずくて仕方がなくて、視線を合わせないまま爪をぷちぷちと鳴らす。 「なんだったの?」 「あー……」  言わなきゃいけないんだろうけど言いたくなくて、口をへの字に曲げた。 「まぁいいかぁ、なんかおやつ持ってくるよ」 「そんなのよりっ」  そう言うと、ちょっと意外そうな顔をする。  いつもオレが腹減った腹減ったって言って、何かしらおやつがいるって騒ぎ立てるからだとは思うんだけど、オレだって腹が減るよりも大事なことがあるんだ!  何も言い出さないオレの隣に腰を降ろして、「あー疲れた」って言ってばたんとベッドに倒れ込む。 「き、聞こえなかったよな?」 「うん?なんかあったっけ?」 「べ、別に、なんでもないよ」  きょとんとして首を傾げるのを見てほっとしてしまうのは、つまりそう言うことだろう。  小さい頃から変わらない、ちょっとぼんやりとしたような顔を見ながら、さらにぷちぷちと爪を鳴らす。 「なぁ ……なぁってば!」  んー?と帰って来た返事は、ついさっきまで眠そうなそぶり一つ見せなかったのに、半分眠りこけているような声だった。 「もしさ、好き 「えええっ⁉」 って言われたらどうする?」  口も目も見開いて驚いて飛び上がるから、オレも驚いて飛び上がる。  びっくりしているお互いを見詰めて……気まずくてどちらともなく視線を逸らした。

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