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ガラスのつばさ(6)
泣き疲れ再び眠りに落ちた双子を寝かせ、俺は深く息を吸い、吐いた。
ふと気配を感じ振り向くと、眉を顰めた父が仁王立ちしていた。
安らかな寝息を立てる双子を一瞥し、跪いていた俺を視線で射抜く。
「何事だ」
感情の欠片も感じさせない、冷徹な言葉。
「父さん……」
いつからだろう、親子という関係に執着しなくなったのは。
求めても無駄なのだと、諦めるようになったのは。
そして、自分からも与えることがなくなったのは。
なんだったろう、その感情は。
「ようやく寝たか」
短い息が、父の鼻から吐き出てくる。
俺はゆっくりと立ち上がり、少しだけある身長の差を埋めるように彼を見下ろした。
「この子たちは、俺が引き取ります」
一瞬、父の目が見開かれた。
だがそれはすぐに、醜い嘲笑に満たされる。
「馬鹿を言え。お前は私の跡取り……」
「会社は辞めない。跡も継いでやる。それでいいだろう!」
父の胸倉を掴み、ぎりぎりと締め上げた。
低いうめき声と一緒に、高く甘い声が、俺の耳に届いた。
視界の端に、寝返りをうつ草太の姿が映る。
俺は、突き飛ばすように父を解放した。
しばらく蹲ったまま呼吸を整えていた父が、静かに言った。
「……お前の好きにしろ」
父はのろのろと立ち上がり、乱れた襟口を整えようともせず去っていった。
兄さん。
あなたの忘れ形見は、俺が育てます。
二度と、こんな哀しい思いをしなくてすむように。
これからのふたりの人生が、たくさんの愛で埋めつくされた日々であるように。
幸せだと、微笑むことができるように。
そして、いつか。
いつかその翼を、大きく広げることができるように――。
fin
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