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存在の総てを愛に変えて
服を掴む小さな紅葉のような手…。
寝ぐずりしていた琥珀が、漸く寝入った。
「…………………」
油断してはいけない。
熟睡しただろうと手を離せば、パッチリと目を開けてぐずり始めるかもしれないのだ。
もう少し待とう…。
そう思った頃、珊瑚を寝かしつけていた璃音も息をついた。
「まだまだ、油断大敵」と、お互いに目配せをする。
無理矢理昼寝をさせたくはないのだが、保育園で流行しているインフルエンザに罹り、中々熱が下がらず難儀をした二人だ。
なるべく体力を消耗させたくない。
せめて30分だけでも休ませてやりたい。
だが、共に不在の両親の代わりに子守に来た兄達と遊びたくて仕方ない双子は、テンションが上がったままで寝るのを嫌がった。
部屋を少しだけ暗くして、低めの音量でリラックス効果のある曲を流し、辛抱強く寝かしつけて40分。
漸く寝入ったのだ。
幼い弟妹にハーフケットをかけてやり、ゆっくりソファに並んで座る。
キュウッとしがみついて眠る二人が、なんとも可愛くて仕方ない。
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