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「………僕が女の子だったら、こんなふうに龍嗣の赤ちゃん産めてたかなぁ…」
ボソリと璃音が呟いた言葉に、瑠璃の心臓が跳ねた。
伴侶と同じ性でなければ、自分もこうして子供を抱けただろうかと、漠然と思っていたからだ。
「……………」
愛しい伴侶の命を未来に繋げる事ができない。
どんなに深い愛情を抱いても、それだけは叶わない現実…。
「俺も…。
俺もあの二人の子供を産みたいって、何度も思った。
でも、これだけは叶わないんだよなぁ…」
琥珀の背中を撫でながら、想いを口にする。
「玲の子供だったらこうなんだろうなとか、忍の子供だったらこうなんじゃないかなとか、想像したりしてさ…。
でも、現実には無理だって思い出して泣けてくる…」
「僕もそう…。
龍嗣の赤ちゃんだったらどんなかなって…。
雪や雫みたいに可能性があったら、どんなに良かっただろうって思ったりしてね…」
ほろ…。
ほろほろ…。
知らず知らずのうちに涙がこぼれる。
伴侶達は、決して二人を責めたりしない。
深い愛情を注いでくれる。
その愛情が深ければ深いほど、愛しい伴侶の血を引いた命を残したかったと思うのだ…。
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