122 / 262
・
「俺さ…、今度生まれてくる時は、絶対伴侶の子供を産みたいな…。」
「わかる、それ…。
目茶苦茶好きな相手の命だったら、未来に繋げて行きたいって思うよね…。」
今、腕の中にいる弟妹が、もし自分と伴侶の間に芽生えた命であったなら…。
きっと沢山の愛情を注いで育んでいただろう。
生まれ出たなら、伴侶とともに惜しみ無く愛情を注いで育てただろう…。
「玲も忍もさ、子供がいなくても構わないって言ってくれる。
お前がいればそれでいいって。
俺達は、瑠維だからいいんだって。」
「龍嗣もね、僕に言った…。
自分はヤキモチ妬きだから、子供にきっと嫉妬する。
二人でいるからいいんだって。
ずっと独り占めできるからいいって。
でも、時々思うよ。
赤ちゃんを産めたらなぁって…。」
無い物ねだりだとわかっているのだ。
命を生み出せる構造の体ではないのだから。
それでも、やはり思ってしまう。
身の内に孕んだ伴侶への愛情を形にできたなら、どれだけよかったのだろうと…。
しんみりした空気の中、玄関の方で音がした。
ともだちにシェアしよう!