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第一章 花言葉の出会い

 新見 雪緒(にいみ ゆきお)は、高校2年へ進級する春休みに祖母の家まで遊びに来ていた。  信心深く、仏壇に花を欠かしたことのない祖母。  そんな祖母に頼まれて、雪緒は花屋へ買い物に来ていた。 『フラワーショップ・はた』  ショッピングモールの中に作られた、こじんまりとした花屋だ。  しかし店頭にはワンコインで買える可愛らしいブーケが並んでいたり、ウインドウにはセンスのいいリースが飾ってあったりと、工夫が凝らしてある。  綺麗な文字やイラストが描かれたブラックボードも立ててあり、雪緒は眼をやった。 『3月27日の誕生花は、ムスカリ。花言葉は「明るい未来」です! あなたの未来が、ハッピーな出来事で満ちていますように!』 「へぇ。花言葉、かぁ」  雪緒の母は花が好きで、時折雪緒の部屋にまで花瓶や鉢植えを置く。  それで自然と彼も花好きに育ったが、花言葉までは意識になかった。  おもしろそうな店だな、と雪緒はその敷居をまたいだ。

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