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第一章・2
祖母に頼まれた、仏壇に飾るキク。
スーパーに売ってあるから、とお金を渡されたが、あいにく売り切れだった。
そこでこの花屋に入ったわけだが、おもしろそうな店、と感じた通り、おもしろい出来事が雪緒を待っていた。
店員は、雪緒と同じ年齢くらいの少年だった。
バイトさんかな、と近寄ったところに、雪緒より早く来ていた男性客とのやり取りが聞こえて来た。
「黄色いバラの花、ですか?」
「うん。5000円くらいで作ってくれる? 可愛くラッピングしてね」
「失礼ですが、お客様。それをどなたか、例えば彼女さんに贈られる、とか?」
「解る? 参ったな~♡」
彼女は黄色が好きだから、誕生日に黄色いバラをプレゼントする、とその客は言った。
途端に、店員の声が大きくなった。
「お勧めできませんよ! 黄色いバラの花言葉は『恋に飽きた』ですから! 彼女さん、怒りますよ!」
「え! そ、そうなの!?」
じゃあ、何色がいいんだろう。
雪緒は、成り行きを見守った。
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