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第一章・3
「ここはベタですが、赤いバラをお勧めします」
「は、花言葉は?」
「そのものズバリ、『あなたを愛しています』です!」
「なるほど! じゃあ、それで頼むよ」
ありがとうございます、と店員の少年は慣れた手つきで、赤いバラを手早く花束にまとめ始めた。
「ご予算は5000円、と言うことでしたが、本数はいかがいたしましょうか?」
「本数?」
バラの花は、本数によっても花言葉が変わるんです、と少年は顔を上げて言った。
「お勧めは、6本の『あなたに夢中』か、9本の『いつも一緒にいて欲しい』ですが」
「9本! 9本にして!」
かしこまりました、と9本のバラを選ぶ少年に、雪緒はすっかり感心していた。
さすが、花屋さん。
こんな細かいことまで暗記してるなんて!
やがて、男性は背筋を伸ばして花束を手に店を出ていった。
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