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第一章・4
「お待たせしてすみませんでした。何をお選びですか?」
少年が、雪緒の方に向き直った。
背の高い、がっしりした体つきに、浅黒い肌。
彫りが深く、奥二重の眼は優しい。
少年もまた、雪緒を見ていた。
ボクシングで言えば、バンタム級くらいの小振りな体格。
色白の肌に、癖のある柔らかそうな髪。
一瞬静まり返った店内に、二人は戸惑った。
「えと、あの。お仏壇に飾る、キクの花をください!」
「あ、はい。何本ほど?」
そこで雪緒は、先ほどのやりとりを思い出した。
キクにも、花言葉ってあるのかな?
「キクも、色や本数で花言葉が変わるんですか?」
「本数は聞いたことないですが、色によって花言葉は変わりますよ」
赤は『あなたを愛しています』。
白は『真実』。
黄は『敗れた恋』。
そんな解説をする少年に、雪緒は感心して頷いていた。
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