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第八章・7

 ぱあっ、と雪緒の顔が晴れた。  ぽろぽろと、涙がこぼれた。 「あぁ、泣くなよぉ」 「ごめん。あんまり嬉しくって。ごめん」  花束を、凌介の愛を受け取り、雪緒はようやく落ち着いた。  作業台に掛けさせてもらい、涙をぬぐった。 「今の時間帯、お客さん少ないから」  そう言って、凌介はお茶を出してくれた。  飲み物を口にして、ようやく人心地ついた雪緒は、バッグから書類を取り出した。  昨晩書いた、雪緒の気持ちだ。 「これって、履歴書!?」 「アルバイト募集の張り紙、してるよね。僕を、ここで働かせてくれないかな」  凌介の力になりたいんだ、と雪緒は決意を込めた眼差しだ。 「雪緒」 「それから、これ」  雪緒は、野の草のブーケを凌介に渡した。  白い小さな花をたくさんつけた、ナズナの花束だ。 「ナズナの花言葉、凌介なら解るよね? 今の、僕の気持ちだよ」  凌介は、ブーケを大切に大切に胸に抱いた。  ナズナの花言葉は、『あなたに私のすべてを捧げます』だ。 「……参ったな。俺、学校辞めたのに、こんなに熱烈に恋しちゃっていいのかな」 「好きだよ、凌介」 「俺も愛してる、雪緒」  言葉の次は、体で抱き合った。  咲き乱れる花々の中で、いつまでも幸せを噛みしめた。

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