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1、諒の使命

「諒、私は仕事に行ってくる。 戸締まりをして出掛けるように」 「はい、父上」 父を送り出した後、諒は自分の 造った服を籠に入れてある場所に 向かう。それが日課になっている。 「漢さん、頼まれた人数分造って きましたよ。こちらです」 「ありがとう、ありがとう。 本当に助かった」 諒が来た町は奴婢(のび)が集まり 生活している。貧困で苦しんで いる為、日々着る洋服でさえ買えず 服が破けても繰り返し使っている 人が殆ど(ほとん)だ。 そこで、諒は働いて稼いだお金を 使い奴婢の為に服を造るように なったのだ。 「服の大きさも大丈夫ですね。 子供達の服は成長が早い為 大きめに造りました。 あと、こちらを」 渡したのは袋に入った米と魚だ。 ここに来る途中の市場で買って おいたのだ。 「なんと、食料まで! よろしいのですか?!」 「いいのです。子供達にも分け 与えて下さい」 この後、挨拶をした諒は家に帰り 生活に苦しむ奴婢の為に服を造るのだ。

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