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19、悲劇

腕を掴まれ、たどり着いた先は 小さな池がある場所だった。 「あなたが、諒ね。男の癖に 小さくて弱そう。あなたの どこが気に入られたのかしら」 無理やりここへ連れて来たのは 数名の女性だった。皇宮殿の 衣装とは違うため、他の部署の 女官だろう。 「あなた、ここに来て結構 経つけど、位はなに?何故 ずっと皇宮殿にいるの!」 何も答えられない。 諒でさえ、ここを出なければ ならないと思っていた。 しかし、肝心な許可証を決して 渡そうとはしなかったのだ。 「何故何も答えないの!男の 癖に陛下の寵愛を独り占めする気! そうだ、あなたの身体に傷を つければ陛下も目が覚めるはず。 あんたなんか田舎に戻ればいいのよ!」 二人の女官が諒を押さえつけ 紐のような物で手首を縛りつけた。 「やめて、下さい!やめ・・」 必死で抵抗し、何とか 拘束を解いて逃げようとした。 しかし、ある女官が池を目掛けて 諒の背中を押したのである。 小さい池とはいえ、水深は深く 水温も低い。諒は懸命に助けを 求める。 (誰か・・助け・て) 一気に身体が冷えた事で意識が 朦朧(もうろう)とする中 「そこで、何をしている! はっ、諒!大丈夫か。 しっかりしろ!」 「将内官さ・・」 将を見た諒は何かを伝えようと したが、口が思い通りに動かず 話すことさえ出来なかった。 直ぐに医官を呼び、皇宮殿へと 運ばれた。

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