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GAME1
ルームシェアをはじめて約一週間。カナさんから身体の不調を訴えられたことは一度もない。だけど、急にぶっ倒れるくらいだから、相当に疲れは溜まっていたんだろう。
――なんだよ。言ってくれたら編集くらいおれがやってあげたのに。
そうは思うが実際は、おれがカナさんに甘えてふたり実況の動画編集は、ほとんどカナさん任せだった。それがしんどかったのかな? それとも、やっぱり……おれと生活するってことが少なからずストレスだったのかな。ルームシェアの話を持ちかけたのはおれで、カナさんはずいぶんと渋っていた。本当は嫌だったのかもしれないと思うと、胸の奥から苦いものが込み上げてくる。
「……ん」
ずっと眠ったままだったカナさんが、わずかに身動ぎする。慌てて顔を覗きこみ「カナさん」と呼びかけると、まぶたがぴくりと戦慄き、ゆっくりと持ち上がっていく。
「カナさん、わかる?」
「……ん、ぁ……あれ? ハルくん……」
ぱちりと目を開いたカナさんの顔はずいぶんとすっきりしていて、倒れた時の蒼白さが嘘のようだった。
「カナさん、倒れたんだよ。過労だって」
「かろ……なに?」
「か・ろ・う。働きすぎの睡眠不足。ついでに栄養も足りてねぇってさ」
目をぱちぱちとしばたたかせ、なにか思い当たる節があるのか短く「あぁ」と呟いて目を伏せる。
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