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GAME1
「なんで言ってくんなかったの。急にぶっ倒れるから、カナさん死んだかと思って、おれ……」
ダメだ。声が震える。過労だとわかった今は笑い話でも、呼んでも呼んでも目を開けてくれなかった時間は地獄だった。
「……ごめん。迷惑かけちゃったね」
ごめんねぇと、もう一度。いつものように間延びした鼻にかかった声が聞こえてホッとする。
「迷惑じゃなくて心配! ほんとマジ死んだかと思って焦ったわ」
救急隊がやってきて酸素マスクを装着されたカナさんを見た時、おれはぼんやりとカナさんと撮った最後の動画はなんだったけ? と考えていた。どれが遺作になるんだろうとか、リスナーにはなんて説明したらいいんだろうとか。頭の中を駆け巡ったのは、腹がたつくらい実況のことばかりで、共に過ごした日々がいかに楽しかったか、いかに愛おしい日々だったかを、カナさんが死ぬかもしれないという局面でおれは気付かされたのだ。
それがなんだ? 過労って。ああ、くそ。今になってめちゃくちゃ腹がたつ。
「とにかく。今日一日は入院らしいから、大人しく寝てなよ」
「えー……」
「えーじゃないわ! 目が覚めたってこと報告してくる」
病室を出て深呼吸をひとつ。そうでもしなければ怒鳴りちらしてしまいそうで、泣いてしまいそうで困る。
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