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GAME1

 おれにとってのカナさんは、実況界のトップランナーで、本人には言わないけれど憧れの存在だ。高校を卒業し親の反対を押し切ってゲーム実況の道に進んだのも、ぜんぶぜんぶカナさんに追い付くためだった。  カナさんとの初コラボは、おれが二十歳の時。カナリアと名乗るふたつ年上の先輩は、名前通りの金の髪と、少し鼻にかかる高い声で、おれのことをハルくんと呼んだ。おれは緊張して妙にテンションだけあがって、ふたりでやったゲームは有り得ないくらい楽しくて……カナさんが「またやろうね」って言ってくれた時、本当に嬉しかったんだ。  それから六年。カナさんは出会った時と変わらずおれのことをハルくんと呼び、今ではもうリスナーに『ハルカナ』と呼ばれるくらい、おれとカナさんのふたり実況は当たり前になっている。  まだたったの六年の付き合いかもしれないけど、おれにとってはもう十年以上も一緒にいる友人のような、そんな感覚だ。些細なことで言い争うことはしょっちゅうだけど、ガチの喧嘩は一度もしたことがない。互いに気遣い屋の一面があるから、これはダメだなと思ったらおれが一歩引いたり、カナさんが折れてくれたり。それなりにいい距離間でやってこれたと思ってる。  それなのに、なんで?  なんでおれはカナさんの異変に気付けず、なんでカナさんはおれに不調を訴えなかったんだろう。考えれば考えるほど、自分の愚かさと浅はかさがクローズアップされて、おれは珍しく少しだけ泣いた。

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