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おまけ・続有料彼氏・前編

「 青、来月の連休暇? 」 「 暇ですよー 」 「 じゃあたまにはこっちで遊ばない? 遊園地とか久々行きたくて。一緒に行こうよ 」 「 いいですね。楽しみにしてます 」 メールでそんなやり取りをしたのが1週間ほど前。 遊園地なんて子どもの時以来だと毎日のようにワクワクしながら連休が来るのを待っていると、優斗さんから郵便が届いていた。 「?なんだろう…」 封を開けて中身を取り出すと…そこには切符が入っていた。 よく見ると会う約束をした連休の日付で、オレの最寄駅から待ち合わせの駅までの往復切符だった。 しかも指定席で…切符なので、もちろん料金もそこに記載されているが、決して安いものではない。 慌てて携帯を取り出して優斗さんへと電話をする。 『…はい』 「あ、優斗さん、青ですけど!」 『うん』 「今帰ったら、郵便で、切符が届いてたんですけど…」 『あぁ、うん。それで来てねー。時間ずらしたほうが良かったら窓口で変更してもらってー』 「いや、何言ってるんですか、こんな高いものダメですよ!いつも優斗さんが来てくれてるんだから…行く時くらいちゃんと自分でお金出しますから!」 『んーそう言うと思ったけどさぁ。でもそれは、もともと青のお金だから』 「えぇ?」 そう言われても、自分は優斗さんにお金を貸した記憶もなければ何かを奢った記憶もない。 そう思っていると… 『最初に青とデートした時貰ったお金だから。それでもまだ全然足りないくらい。ずっと返したかったけど、青はお金返しても受け取ってくれないでしょー?』 と言われ驚いた。 「え、何言ってるんですか!デートって有料彼氏の時のですよね?あれは、だって、優斗さんは仕事だったからで…」 『んーん。オレは普通に楽しんじゃってて全然仕事になってなかったしさ。青がいらないなら…他に使い道ないし捨てちゃってもいいよ』 そう言った挙句に『じゃあ、連休楽しみにしてるからねー』と、その話はおしまいとばかりに電話を切られてしまった。 (…どうしよう捨てれるわけないし…) そんなもったいないことはできないし、送り返して優斗さんの気持ちを無下にすることもできない。 (……これで会いに行って、会った時にオレが奢るようにしよう…) そう決意して、切符を大事に財布へとしまった。 「青!」 「あ、優斗さん…」 待ち合わせ当日。駅で優斗さんを探してきょろきょろと顔を動かしていると、少し離れた位置で自分の方に手を振っている人物に気づき、慌ててそちらへ駆け寄る。 人ごみの中に埋もれていたが、やっぱり顔だけでなくオーラというか、カッコよさが周りと比べて格段に際立ってる。 ジーパンにTシャツにスウェット生地のジャケット…と、ラフな服装を軽く着てる感じなのに何かすごい決まっていて、彼氏をそっちのけで優斗さんをチラチラ見ている人もいた。 (…やっぱりすごいなぁ、優斗さん) 改めて感心し、まじまじと見つめてしまう。 「何?どしたの?」 「あ、いえ…優斗さん、切符、すいません。ありがとうございました」 「あー、いーんだ。オレがやりたくてしたことだし、オレが来てって誘ったんだし。それより電車疲れなかった?」 「いえ。すっかり寝ちゃってたんで…」 「はは、そっか」 軽く会話をしながら並んでゆっくりと歩き出す。 連休で遊園地の最寄り駅前ということで、遊園地への方へとたくさんの人が歩いていた。 「青は遊園地以外どっか行きたいとこある?」 「え?あ、すいません。特に考えてなかったです。遊園地で頭がいっぱいで…」 「はは、そかそか。じゃあ、はい、チケット」 そう言って優斗さんがさっとチケットを取り出した。 「え!チケット買ってあるんですか?!オレが払おうと思ってたのに……お金!お金払います!」 慌てて財布を取り出そうと鞄を漁ると、 「いーっていーって。知り合いのつてで安く買えたんだ。ファストパスも3つ買ってあるよ」と言われる。 (もう有料彼氏じゃないのに…流石元NO.1…) どこまでもスマートだなぁと感心しながら、財布からお札を取り出して渡すが、 「いいっていいって!それじゃあオレ貰い過ぎだから!」 と言って全く受け取ってもらえない。 「受け取ってください」「いいって!」「受け取ってください!」「いいって…!!」 というのを何度も繰り返していたらいつの間にかもう遊園地の入り口は目の前にあって、周りの人からの目もだいぶ痛くなってきたので仕方なくお金は自分の財布へ戻した。 (…電車のお金も考えたら、これじゃ全然足りないくらいなのに…) 「…優斗さん、これ受け取ってくれないならこっからあとは全部オレがお金出しますからね。絶対ですからね」 「えー?いいのに…」 「ダメですから。絶対ダメですから」 キッと睨み付けて言うと、優斗さんがオレの眉間に手を伸ばし、人差し指で眉間のしわをぐりぐり伸ばしながら「はいはい。わかりましたー」と言ってようやく折れてくれた。 連休ということもあり、入場ゲート前は大混雑していた。 チケットを既に持っているゲートと持っていないゲートではやはり持ってない方の列がなかなか進まないようであったが、優斗さんが準備していてくれたおかげで割とスムーズに入場できた。 まだ開園したてということもあり、待ち時間がそこまでではなかったので「ファストパス使う前に何か1つ乗っていこう!」ということで、パンフレットを開き、吟味しながら足を進める。 「んーどうしよっか」 「どれも面白そうで迷いますね」 「やっぱさ、入り口付近は人がどんどん来るから、1番最初は奥の方とかが空いてんじゃない?あ、これとかどう?」 「いいですね。こういうの好きです」 それは遊園地の奥の方にある大きな船型の乗り物で、前後に揺れたり回転したりするものだった。 そうと決まればと、遊園地の奥を目指して速足で向かっていると、 「あ、青!ちょっと待って!」 と言って、優斗さんが急に立ち止まり、オレを引きとめた。 「?なんか乗りたいのありました?」 そう尋ねると、優斗さんはちょっと気まずそうに… 「や…そうじゃ、ないんだけど……あれ、一緒にやんない?」 と言って、少し先を指をさした。 優斗さんの指先を辿ると、そこにはこのテーマパークのキャラクターであるたれ耳の犬にちなんで、犬のたれ耳がついた帽子が売られていた。 つけ耳のカチューシャとかよりは若干つけやすい気がするが…いやでも、男2人でそれはどうなんだろう。 「えー…えと…」 オレがどうしたものか悩んでいると 「あーいうのさ、やったことなくって。でもあーいうのって遊園地楽しんでます!って感じするから1回でいいからやってみたかったんだよねー…青と一緒だったら心強いんだけど…やっぱダメか」 そう言ってへへっと笑ったその顔はしょぼんとしていて、まだ着けてないのにたれ耳が見えそうな感じだった。 優斗さんのそんな顔を見たら、思わず 「…よし、買いましょう!あ、お金はオレが出すんですからね!」 と言ってしまい、急いでお店に入って、カーキのキャスケット帽に犬耳がくっついてるものと、えんじ色のニット帽に犬耳がくっついたものを買った。 その場でタグを切ってもらい、優斗さんにキャスケット帽子を手渡し渡して、無言で頷きあってから同時にかぶる。 優斗さんは相変わらずの美形だから、こんな帽子でも様になっていた。カッコいいのに、なんか可愛い。 じぃっと見ていると優斗さんがくしゃりと笑った。 「…青、ありがと」 「…いえ」 そう言って笑った優斗さんは、犬耳しかつけてないのに、ブンブン振ったしっぽが見えそうなくらい喜んでいるように見えた。

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