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おまけ・続有料彼氏・中編
帽子をかぶってから速足で船の乗り物へと向かうと、やっぱり読みは当たっていたようで、待ち時間は15分程しかなく割とスムーズに順番がやって来た。
勇気を出してかぶった帽子は、「乗ってる最中に落ちてしまう可能性がある」ということで、乗り物に乗る時には外さないといけないらしい。
スタッフに促されて荷物置きに帽子を置いて船に乗り込み、安全バーを頭から胸元へ下げてぎゅっとそこに捕まる。
「…久々なんで、なんか緊張します」
「はは、オレも」
オレの右横で優斗さんがニカっと笑った。
その顔は相変わらず綺麗すぎて、近くで見るのには心臓に悪い。
優斗さんの笑顔にか、乗り物への期待になのか分からないけどドキドキしていると、ブザーが鳴って船が動き出した。
振り子のような動きで最初は小さく前後に揺れていたのが、どんどんと大きな揺れに変わり、てっぺんのあたりで一瞬停止してから、回りきらずにまたぐうっと後ろへ戻る。
(…次、回転くるかもっ)
「…っ」
てっぺんから見下ろす景色も急降下する感じも、浮遊感も。
久々に体験するそれは楽しいけど同じくらい恐怖もあって、ぎゅうっと安全バーにつかまっていると、優斗さんにぽんと肩を叩かれる。
前方を見るのに夢中だった視線を優斗さんへ向けると
「青、次一回転だよ!」
そう言いながら優斗さんが自分の両手を安全バーから離し、オレに促すようにばんざいをした。
「えぇ…っ」
躊躇ってぽかんとしていると「ほら!」と優斗さんが左手でオレの右手を掴み、オレに万歳をさせたその瞬間、
ぐわっと風を受けながら勢いよく前進し、そのまま船が一回転した。
「…っわ~~!」
片手を離しただけでなんかすごく心許なくて今まで以上の恐怖を感じたが、全身で風を切るような何とも言えない感覚が楽しくて、次の回転はは両手を上げてみた。
「わーーーーーっはは!手あげるとなんか全然違いますね!楽しいです!」
「ね!わーーーー!」
前後に何度か回転をした後、船はゆっくりとまた小さな揺れに戻り、そして止まった。
「はー…楽しかったね」
「ですね」
安全装置が外れて船から降りると、そこには乗る前に外した帽子が待ち構えていた。
お互いに顔を見合わせてまた頷きあってから帽子をかぶり、次の目的地へと移動した。
次は優斗さんが用意していたファストパスを使い足が浮いているジェットコースターへ乗ることにした。
足が浮いてるタイプは初めてで、足を踏ん張って力むことができないからさっきみたいに両手を離すことなんてとてもできそうになく必死に安全バーにしがみ付いていたが、色んな方向へぐるぐると回転して楽しかった。
その次はジェットコースターを降りてすぐのところにあったゴーカートが待ち時間30分と割と少なめだったため、そのまま並ぶことにした。
「さっきの足の浮いてる感じ、凄かったですね!オレ、あぁいうの初めてで!」
「あ、初めてだったの?青結構目つぶってたよね」
そう言ってクスリと笑われる。
「え、こっち見てたんですか?優斗さん余裕ですね…!」
きっと怯えて間抜けな顔をしてただろうなぁと思うと恥ずかしくなって、手持無沙汰で意味もなく帽子を目深にしてから元に戻す。
「オレジェットコースターとか得意っていうか、すごい好きなんだー。でも観覧車と…あとなんかブランコみたいなんでさ、ワイヤーでつるされたようなのでくるくる回りながら凄い高さまで行くやつあるじゃん?あれは苦手!」
「え、何でですか?ジェットコースターより全然怖くないじゃないじゃないですか?」
「えー!なんか風に揺れたりさ、ジェットコースターより頑丈に固定されてない感じがさ、落ちそうな気ぃしてすごい怖い」
「えー?はは、優斗さん不思議」
ファストパスでサクっと乗れるのも嬉しいが、待ち時間にしゃべっているのも楽しくて、待ち時間はあっという間に終わり、順番が来たのでゴーカートに別々に乗り込む。
ゴーカートは小さなエリアを時間いっぱい何周も走り回るようにできてるのだが、車体はぶつかってもいいように…というかわざとぶつかって楽しめるようにゴムのようなもので覆われていて、優斗さんだけじゃなく他のお客さんとも何度もぶつかってはその度にぼよんとなる車がなんかすごく面白かった。
その後後ろ向きに走るジェットコースターが怖すぎてギャーギャー騒いだり、水のアトラクションでばしゃんと水がかかってちょっと濡れたりしながらも、遊園地ってこんなに楽しかったっけ?と思う程にはしゃいだ。
水のアトラクションのところでは出口に続いて売店があり、そこでは着替えの服とともに絶叫ポイントで撮られた写真が売られていた。
(え、いつ撮られたんだろう!分かんなかった!)
服は着替えるほどは濡れていなかったので、服は見向きもせずに優斗さんが「オレらどこかなー」とか言いながらいくつかの画面の中から自分たちを探していると、真ん中へんにある画面の中に自分たちの姿を見つけた。
優斗さんはきっとアトラクション中にカメラの場所に気づいたのだろう。
絶叫ポイントだというのにばっちりとピースして相変わらずのイケメンに写っていたが…オレはというと、目をぎゅうっとつぶって何か叫んでいる感じで情けなく写っていた。
「…えー…!」
(何これ…恥ずかしすぎる…!)
そう思っていると、優斗さんが
「はは、上手く撮れてるね!買っちゃおっかなー」
と言って財布を取りだしたので慌てて止める。
「止めて下さい!こんなの写真に残ったら、恥ずかしすぎます!」
「えー?めっちゃ楽しんでる感じでいいじゃん。よく考えたら青との写真とか1コもないし、記念にー」
そう言って買う気満々でレジに向かおうとするので
「え!ホントにヤですよ!写真ならこんなんじゃなくて、ちゃんと撮りましょうよ!」
と必死で止めると
「そっかー、じゃあしょうがないなぁ」と言いながら優斗さんは財布をしまってくれた。
ほっとしたのも束の間、優斗さんが「じゃあどこで写真撮ろっかー?」と言い出したので、ホントに撮るんだ?と内心焦ったが、自分が言い出した手前、撮るしかない。
じゃないとこの写真を買われてしまうだろう。
「え、あ…じゃあ、キャラクターのワンコと一緒に撮りますか…?」
「え、ワンコと?いいの?…じゃあワンコ探そっか!」
そう言うと、ノリノリな優斗さんはパンフレットを開いてそこに書かれているワンコの出没しやすいポイントをチェックし、近場にあるポインントから順に回ることにした。
最初の場所でも次の場所でも見つからず、3か所目でようやくワンコを見つけたが、写真待ちしているのは子ども連れの家族やカップルばかりでなんかすごく場違いな気がしたのだが、
「オレ、キャラクターと写真なんか撮ったことなかったかも!」と優斗さんが楽しそうに笑ったから、「…オレもです」としか言えなかった。
数分で順番は回ってきたので、携帯をスタッフに渡して写真を撮ってもらう。
撮り終えた後にワンコにお礼を言うとワンコにギュッとハグされてなんか嬉しかったが、優斗さんが「…ずるい」と言ってふて腐れた顔をしたのでちょっと面白かった。
それから夕方までアトラクションを巡り、ヘトヘトになってお腹もすいてきたので帰ることにした。
「はー…楽しかったですね!」
「ねー。ちょっと疲れたし、せっかくだからこのへんでご飯食べてこうよ」
「いいですね!」
遊園地を出てブラブラ歩きながらお店を探していると、なんだかやけにいろんな人から視線を感じる。
(優斗さんがカッコいいからだな…流石…)
そう思っていると、優斗さんが
「あ、いけね。どうも視線感じると思ったら、帽子かぶったまんまだったね」
そう言ってワンコ耳の帽子を外した。
園内では老若男女問わずに犬耳帽子やキャラクターグッズを身に着けてる人はたくさんいすぎて、自分たちだけが目立つということはなかったし、いつの間にか完全に犬耳に慣れてしまっていたが、街に出てこの格好はさすがに目立つ。
オレも優斗さんに続いて慌てて帽子を外すと、「はは。髪の毛ぐしゃぐしゃ」と優斗さんに髪の毛を直すように頭をわしゃわしゃされた。
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