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第8話 兄さん達のとある事情・5

 布団の上に仰向けになった天凱さんが、意外と興味ありげな顔で俺を見上げている。 「い、嫌だったら言って下さいね。……あとこれ、別に練習してる訳じゃなくって、俺が天凱さんのこと気持ち良くしたいっていうだけですから……」 「まあいいさ、好きにやってみろ。俺も興味あるしな」  キモノを全部脱いだ天凱さんに覆い被さり、胸元に触れて頬を寄せる。逞しい胸板や乳首に何度も口付けをして、唇を少しずつ腹筋へ、ヘソの窪みへ、脚の付け根の線へと下ろして行く。 「お、……?」 「………」  ──こ、こんなに大きかったっけ?  俺は片手で握った天凱さんのそれを目の前に、ヒクリと唇の端を引き攣らせた。いつもは間近で見ることもなかったから、大きさなんてそこまで意識していなかったけれど。 「何だ、しゃくってくれるのか」 「……は、はい」 「やべえ、こりゃ楽しみだ」  天凱さんは嬉しそうだ。こうなったら俺も覚悟して、ちゃんとこの方を気持ち良くさせないと。 「ん、……」  伸ばした舌で亀頭の裏側に触れ、下から上へと小さく舐める。それを何度か繰り返してから、今度は竿の部分に舌を這わせた。 「彰星……」  根元から上へ向かって舌を押し付け、ゆるゆると動かしてみる。先端まで到達した唇をゆっくりと被せ、少しずつ口の中へと咥え込んで行った。 「……んん」  雷童さんと風雅さんが俺の指にしてくれたように、中で舌を絡ませる。あの後で「絶対に歯が当たらないようにしろ」と助言してくれたのは小椿さんだ。歯が当たらないようにしゃぶるというのは思った以上に顎に負担がかかる。皆、こんな大変なことをやっていたのか。 「ん、はぁっ。……どうですか天凱さん、気持ち良いですか?」 「いや、その……」  枕から首を上げて俺を見る天凱さんの大きな目が、いつも以上に見開かれている。茫然としているような、驚いているような表情だ。 「初見世で泣いて逃げてたお前が、そんな色っぽくなっちまったんだなと思ってよ……」 「いいえ」  俺は口元の涎を手の甲で拭い、それだけはきっぱりと天凱さんに言った。 「俺が自ら進んでこうするのは、この三千大千世界で天凱さんただ一人です。これだけはどうか信じて下さい」 「彰星……」 「この言葉にほんの一粒でも嘘があるとお思いでしたら、この場で切り捨てて頂いても構いません。あまてらす様に誓って、本当の俺の気持ちでございます」 「………」  歯を見せて笑った天凱さんが「よっ」と身を起こし、俺の頭をぐりぐりと撫で回した。 「良い口説き文句だ。若い女みてえに真っ赤になっちまうところだった」 「くっ、口説き文句なんかじゃありません……!」  逆に俺の方が真っ赤になっていたと思う。言ったことを後悔したが、もう遅い。 「がははは、やっぱ俺の目に狂いはなかったぜ。彰星、お前は最高の男だ!」 「天凱さんってば! からかわないで下さいっ」

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