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第10話 しあわせ・4

「彰星……」 「お、お返しです……。俺だって、やられっぱなしじゃないですからね……」  天凱さんが苦笑したのを確認してから、俺は天井を向いていた体を彼の上でうつ伏せにさせた。……多分この場合、こうした体勢の方がやりやすい。 「ん、ん――大っきい、です……天凱さん……男らしくて、……」  たっぷりと唾液を絡めながら舌を動かし、先端から溢れた蜜を啜る。口いっぱいに咥え込んで何度も頭を上下させる。全ては天凱さんが教えてくれたことだ。俺がされて気持ち良いことを、大好きな彼に返しているだけ。 「可愛いが、……悪い子だな。お仕置きとご褒美を同時に与えてやりてえ気分になる」 「んん、っ……う、……!」  突き出されていた俺の尻に天凱さんの指が押し当てられた。むずむずして腰がうねり、はしたないと分かっていても――目の前にある彼の男の証が、欲しくて堪らない。 「お願い、です……天凱さん、我慢できませんっ……」 「最高の台詞だ。俺のツボが分かってきたようだなぁ」 「ん、……!」  照れながら笑う俺の尻を撫でて、……天凱さんがとんでもないことを言った。 「自分で跨って挿れてみろ。俺の上で腰を振るお前が見たい」 「そ、そんなっ……」 「頑張れ。愛してるぞ、彰星」 「お、俺も愛してますけどぉ、……」  今夜だけでだいぶ恥ずかしい思いをしたから、今更もう何を晒したって構わないけれど。 「ん、……あんまり、見ないで下さいね……」  乱れたキモノを脱ぎ捨てて覚悟を決め、俺は天凱さんの上へ再び跨った。上を向いた屹立の先端を尻にあてて、少しずつ腰を落として…… 「あ、あ……」 「まさに呑み込まれて行く、っていう感じだな。お前に俺のペニスを食われているみてえだ」 「は、恥ずかしいこと、言わないで……下さいっ……」 「絶景だぜ、彰星」 「だ、だだ、だからぁっ……!」  俺の顔は真っ赤っかになっていたと思う。天凱さんのことは大好きだけれど、この意地悪にはまだまだついて行けそうもない。 「んっ、ん……あ」 「ほら、好きな所にあててみろ。どこが良いのか教えてくれ」  天凱さんの逞しい胸板に手をついて、俺は必死に腰をくねらせた。上になっているのは俺の方なのに、体の中をじっくりと探られているみたいだ。  腰の動きに合わせて、呼吸が激しくなる。 「はぁっ、あぁ……! あっ、……駄目、な所……!」 「ここか」 「あぁっ――、や、あっ!」  白状した途端に体を倒され、身を起こした天凱さんが俺の上に覆い被さってきた。 「て、んがいっ、さんっ……! ああぁっ、嫌っ、ぁ……!」  蹴った掛け布団が畳の上を滑り、枕が行灯にぶつかる。我慢できない快感に体が悦びの悲鳴をあげ、彼のために大きく開いた内股がビクビクと痙攣した。 「彰星っ、……」  上から降ってくる天凱さんの汗。その一粒一粒さえもが、愛おしい――。

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