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第12話 「ふたり」・5

「彰星、目が潤んでるな」 「……あ、……早く、欲しくて……」 「何が欲しい?」  天凱さんの体が俺の上に倒された。濡れた屹立の先端をぴたりと尻の入り口にあてがわれ、耳元でいやらしく囁かれる。 「全部聞かせろよ、お前が思ってること」 「んっ、……や、……天凱さんの、硬くなった……ペニスを、……」  俺は彼の首に両腕を巻き付けてしがみつき、ねだるように腰をくねらせた。 「俺のお尻に、挿れて下さい……。いっぱい、突いて……二人、で……気持ち良くなりたい、です……」  切れ切れに訴えながら鼻を啜り、上目に天凱さんを見つめる。  体中が疼いて熱くて、―― 「あっ、あ……!」  ――気持ち良くて幸せで、深く優しく満たされて行く。 「彰星っ、……痛くねえか、彰星」 「んっ、あ……! 凄い、です……! 天凱さん、大っきぃ、……!」 「彰星――」 「お、俺の奥まで、……届いて、ます……! あっ、あんっ……や、あぁ――!」  激しく前後する天凱さんの腰に、持ち上げた両脚でしがみつく。俺は荒い息を繰り返す天凱さんの頬に、耳に、何度も何度も口付けを繰り返した。 「ひ、あぁ……あんっ!」  体と体がぶつかり合う音。  獣のような二人の呼吸音。  天凱さんが俺を突き上げる度にベッドが揺れ、かけがえのない歓びに体が痙攣した。 「は、あぁっ……! もう、俺……無理ですっ……」 「俺も、……」 「天凱さん、……お願いっ、……お願い」  見世じゃないからスキンを着けていない。それについて天凱さんが何も言わなかったのは、きっと俺と同じ気持ちだったからだ。  何にも遮られず繋がり合いたいという、ただ一人心を許した愛しいへの気持ち。言葉にせずとも感じている互いの信頼と、この人のためなら命さえ預けられるという揺るぎない確信。 「出すぞ、彰星っ……」 「ふ、あ……ああぁっ!」  一つになって、混ざり合って溶け合って、優しい口付けで迎える絶頂後の陶酔感――俺達は至近距離で互いの瞳を見つめながら少しだけ笑い、汗で湿った肌を重ねて抱き合った。 「……彰星。一つ、謝らなければならないことがある」 「な、何ですか?」  乱れたベッドの上。冷たいお茶を出してくれた天凱さんが、バツの悪そうな顔で俺に言った。 「キモノを脱がしたのは良いが、……着せ方が分からねえ」 「えっ。お、俺も分かんないですよ。てっきり天凱さんが着付けてくれるのかと――」  肩に羽織っていたキキョウのキモノをぎゅっと掴み、俺は驚愕の表情で天凱さんを見上げた。俺のキモノはこれしかないのだ。そろそろ屋台に戻らないといけないし……どうしよう。 「まあ、待て。ちゃんと着付けはしてやる」 「だ、誰かを呼ぶとか……?」  不安に駆られてそう言った時、下の階で一ノ瀬堂の引き戸が開く音がした。 「天凱、いるの?」  女の人の声だ。二階へ続く階段の下から声をかけているらしい。 「天凱」 「……ど、どなたですか。まさか……」  心臓が早鐘を打ち、俺は意味なく中腰の体勢になりながらキモノで体を包み込んだ。  天凱さんの名を親し気に呼ぶ、女の人の声。  もう間違いない。 「いるよ、お袋。上がって来てくれ」 「て、てて、天凱さんっ!」

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