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第1話 教室

 ヤバい人だと思った。  思っていた。  でもまさか・・・自分がそうされるなんて。  放課後、教室に引きずりこまれ、キスされて、押し倒されていた。  でも抵抗しなかったのは・・・その人の狂ったように光る目が、なんでだか、懇願しているように見えたから。  唇を重ねられて舌を入れられて・・・よくわからないまま応えてた。  キスは初めてだったけれど。    舌を絡められ、こちらからもこすり合わせた。   唾液の味にぼんやりした。  頭がクラクラしていた。  綺麗な人だと思ってた。  ずっと。  それでも、男にしてはってそう思ってただけだ。  話しかけたこともない。  でも、噂通りの人なのはわかった。  何をしたら殴られるのか、何をしたら笑顔になるのかがわからない人、なのは。  誰かが犠牲になっているのは見たことがあったから。  些細なことでブチ切れ、暴力を振るう。  酷いサディストで自分では止まらない人なのも知っていた。  かとおもったら面白そうに笑っていることも。  それもみていた。  何を考えているのかもわからない。  気分次第で下手すれば刺されるんだと評判だった。  だから学校では誰もその人にはできるだけ近づかない。   犯されるんだと言う噂はあった。男が好きなんだと。  でもまさか、自分がそうされるとは、それは予想外だった。  デカくてゴツいこの自分が。  三年と一年、狂った不良と運動部所属の優等生。  接触点はなかった。  たまに廊下ですれ違いその綺麗な姿に見とれはしたけど、  いつでも1人だけのその姿に惹かれはしたけど  それだけだった。  どうにも綺麗な人だったから。  何度か目は合いはした。  でもそれだけで。  自分のことをこの人がその辺に落ちているもの以上に思っているとも思わなかった。  何故か今日、部活の前に忘れものをとりに来て、何故かすれ違ったこの人に、放課後の教室に引きずりこまれたのだ。  キスした唇が離れていく。  息が荒い。  形の良い唇が離れるのが何故か寂しかった。  「ヘタクソ」  見下ろされ、笑われた。  シャツのボタンを外され、ズボンのベルトを抜かれ、チャックを下ろされた。  抵抗しなかった。  綺麗な顔にみとれた。  異様に光る目。   嘲笑うような唇は形がよくて。  ここにキスしたんだ、とボンヤリ思った。  組み敷かれたまま。  「その目・・・」何かいいかけてその人は止めた。  小さく吐息をつくと、優しく胸や首筋にキスしてきた。  思いの外優しい唇だった。  くすぐったくて少し笑ったら、何故か泣きそうな顔をした。  指や唇で身体中を愛撫された。  優しいキスは愛おしむように、落ちてくる。  下着をぬがされ、ガチガチに勃起していた性器にもキスされた。  そして、舌で舐められ、唇で扱かれた。  その気持ち良さに、喘いだ。  わけのわからないままイかされた。  飲まれたのだのと知って、真っ赤になった。  赤い顔をのぞき込まれて、笑われた。  優しい笑顔だったから、余計にどうすればいいのかわからなくなった。  でもその笑顔を見ただけで・・・また自分が固くなるのがわかった。  「スケベ」  また、笑われた。  でも、嫌じゃなかった。  優しいキスの後に跨がられた。  犯されると思っていたのに・・・  挿れていたのは自分だった。  わけがわからなかった。  でも、そこに入っていく感触も、その人がそこで上下に動く感触も、気持ち良すぎて、声を上げた。  わけがわからない。  叫び、腰が動く。  そこをもっと知りたい。  入りたい。  貫きたい。  綺麗な目が自分をみてる。  一番奥にあるものが、どうしてもわからなくて、見つめてしまうような目。  狂ったような輝きの奥に、なにかがあるんじゃないかと思ってしまうような目。  動き方を教えられる。  その淫らな腰遣いが。  達しても、また動かれて、絞りとられる。  その人は笑っていた。  いやらしい言葉を口にし、慣れきった動きで責めてくる。  でも、そのイヤらしさと不釣り合いなその目の奥の不安定なものは何なのだろう。  分からないまま、教えられるままに、何度も達した。    あの人も笑いながら何度もイッた。    とうとう胸の上にその人は倒れ込んできた。  抱きしめた。  そうしたくて。  「ヘタクソ・・・もうお前なんかとはしない」その人は胸の上で言った。  泣いてるんじゃないかと思った。  その人はさっさと身体を離した。  服もろくに直そうとしないで立ち去ろうとした。  尻から、精液をこぼしたままで。  腕を掴んで引き寄せた。  驚く顔が見えた。  狂気の代わりに脆さがみえた。  いや、ずっと見えていた。  狂気の奥にあって、それが目を離させなかったんだと悟った。  「みんな目をそらす。何でお前だけ」  泣きそうな声が言う。  抱きしめていた。  こんな風にしか人に触れられない人が愛しくて。  「ねぇ話、しましょうよ。あんたのことが知りたい」  気になっていたんだ、と思い知る。    話しかけられなかったのはこの人も自分も同じだと。  でもこの人はこの人なりのやり方で近づこうとしたんだ。  ずいぶん狂ったやり方だけど。  「話なんか、ない」  そうその人は言う。  その人はでも腕の中から逃げない。  でも怖がっている。  だって震えているからだ。  だから、キスした。  今度はこちらから触れた  セックスの方がこの人にはわかりやすいと思った。  それに欲しかった。   まだ欲しかった。  この狂った可愛い人が。    どうかしてると自分でも思った。  でも、欲しいのは身体だけじゃない。  おそらく。  だから、もう一度抱いて、終わったら話そう。  話したい。  知りたい。  身体だけじゃなく。  「話しましょう・・・終わったら」  今度は自分から組み敷いたなら、泣きながら笑って「ヘタクソのくせに」と言われた。  「教えて下さい、オレはあんたが初めてだ」  そこは素直に答えた。        また泣き笑いされて・・・それも見たことない顔で。  こんな顔もするんだな、と思った。  胸の痛みにこれが恋だと理解した END

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