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「礼肥はこれくらいでいいか…こんなもんかな」
「では、夕飯の前に風呂に入るといい」
俺の作業が一段落したのを見届けてから忍さんは夕飯の支度をするために家の中へと入って行った。
もうとっくに、俺が男娼なんてしていないことは分かっているはずなのに…
どうして、忍さんはこの家に居てくれているんだろう…
食卓に並んだ鰆は俺の好きな魚だ。
ワカメの味噌汁は、どうやら忍さんの好物らしい。
毎回サラダを付けてくれるが、忍さん自身は野菜がいまいち好きではないようだ。
和食をよく作って、洋食はリクエストしないと作らない。
「明日は遅くなると思います」
「…それは……」
年に何回か、所属部署で飲みに行こうと言う話になる。
下戸の俺を飲み会に引っ張り出しても何も楽しいことはないだろうに、付き合いだからと断りきれない時がある。
「会社での飲み会です。まったく…飲み会なんて、なんでするんでしょうね」
「………」
「お酒なんか美味しくもなんともないのに、皆酒癖悪いし…」
ぶつぶつと文句を言っている俺の言葉に、忍さんははぁと詰めていた息を吐いた。
その呼吸の意味が解らないままに、首を傾げて会話を促すと、先ほどの溜め息を消すように緩く首を振った。
「いつになってもいい、連絡をしなさい」
「え…」
「迎えに行こう」
「だ…その…何時になるか分からないんですよ?」
揺らがない忍さんの目が泳いだような気がした。
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