1 / 4

第1話

「高城さん! 僕と結婚して下さい」 これは、賭けだった。 会社の、喫煙室前の自動販売機。ここに僕はいつも休憩に来る。お目当は、喫煙室によくいる彼。仕事のできるイケメンで、その上ユーモアもある高城明宏さん。 彼のことを知らない人はこの会社には存在しない。それどころか、恋人のいないこの会社の人の全てが、彼に惚れていると言っても過言では無いほどの人気が有る。 そんな高城さんに、僕も恋をしていた。 この時間になると、大抵高城さんはタバコを吸うために、喫煙室に来る。だから、僕はわざわざ遠いこの場所まで、時間を合わせてコーヒーを買いに来る。 自分でも、ストーカーだと自覚はしている。でも、どうせ僕のような地味な奴など、高城さんの目には写っていない。でなければ、とうの昔に詰られているだろう。 いっそ、気持ち悪いとでも言われたら、諦められるのになぁ。そんなことを思いつつ、今日も、いつも通り高城さんを鑑賞させて頂く。 不自然にならないように、ちらりと視線を喫煙室に向けた。すると、今日の高城さんには連れがいた。 連れは高城さんと同じ部署で、こちらもイケメンと噂の佐藤さんだった。僕は、佐藤さんが苦手だ。いや、正確に言うと、妬ましかった。 佐藤さんは、よく高城さんと共にいる。親しげに高城さんと肩を組むことが出来る佐藤さんに、いつも僕は嫉妬する。そして、そんな感情を向けてしまう自分が、嫌になる。 だから、出来れば、佐藤さんのことはあまり視界に入れたく無かった。だがしかし、佐藤さんと居る時の高城さんは、よく笑う。そのため、佐藤さんと共にいる高城さんを、いつも以上に見つめてしまうのだった。

ともだちにシェアしよう!