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第2話 幸せな恋

 青年は男の恋人を抱いた。    男は青年の告白を「男は無理だ」と言ったから。  男が恋人と寝た夜にその恋人を抱く。    誘惑したのはそのためだけに。  あの人はここを吸ったの?    甘くささやいて女の胸を吸う。    あの人が舐めたそこをたっぷりと味わう。    あの人が見たのだと思えば、そりかえる白い女の身体も愛しい。    どこまで舐められたの?    ここも?      青年は女の中に指を入れ、優しく弄りながら言う。         女は頷く。     だから舐める。    たくさん舐められた?    青年は聞く。      たくさん。    女は喘ぐ。    じゃあ、してあげる。  青年は男の舐めた場所を余すところなく舐めていく。    あの人は酷くした?     女を貫きながら聞く。      止めてって言っても止めてくれなかった。      女は声を震わせながら言う。    そう。       じゃあそうするね。       女が止めてと言っても青年は女を揺さぶり続けた。      女のことは嫌いじゃない。      女がいれば女を通して繋がれる。    むしろ愛さえ感じてる  女は男より青年を愛している。      でも男も嫌いじゃない。  好きだったし、男といれば青年と繋がれる。  そう青年が現れてからは青年を愛してる。  男は女を愛している。    何も知らないから。    知られるわけにはいかない。    青年も女も。    全てを失うから。  でも一度だけ、男が正体をなくすほどおかしくなった夜に一度だけ。  薬で正気を失わせたのだ。  3人で寝た。     男は何も覚えていないし、自分の身体をどう使われたかも覚えていないだろう。    男の逞しい身体の上に跨がっていたのは、女ではなく青年だったこと。  夢中で唇で指で、身体の全てをなぞった。  手や指にキスをして、その手の平に頬摺りした。  男のモノを夢中で咥えた。  男は優しく髪を撫でて青年を誉めてくれた。  女だと思って。  女ではなく青年だってことは男にはわからない。  青年の口の中に放ったことだってわかってない。  青年は泣きながら、男の性器をしゃぶり、舐めて、しごいた。  これは、許されないことだから嬉しくて。  そんな青年の性器を女が愛しげに、口や性器で受け入れていた。  女も青年が愛しかった。  自分を愛しているのではなくても。   青年の愛は自分無しでは成り立たない。  自分を通してしか愛せないなら、それでいい。  男が女だと思って下から腰をたたきつけたのは、青年だった。      嬉しい嬉しい、と泣く青年の髪を撫でて、キスしてやれるのも自分だけだと女は知っていた。  男の身体を愛してやり、青年が跨がるだけにしたのは女だったから。  女の柔らかな身体がなければ青年の願いはかなわなかったし、男の逞しい身体があるからこそ、女は青年に深く愛された。  青年は感謝しながら、女の中に入る。  ありがとう。  ありがとう。  泣きながら。  女にキスしてくれる。  愛してるわ、女は言う。  僕も。  あの人も君も。  二人は共犯者としてキスをする。    男は幸せだ。  美しい恋人、幸せな夜がある。  女も幸せだ。  青年も幸せだ。      またあんな夜があるかもしれないから。  何も知らない男が不自然で歪んだ幸せを支えている。   END

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