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第4話 視線2

 そこに入ってくる時だけは、まだ少し少年は緊張する。  だけど、いつも、優しくゆっくりとそれは入れられる。  少年の後ろの穴を押し広げ、身体の中をそれが、ずぶりずぶりと、入ってくる。  「あっ」     少年は声を上げる。  「あかんやろ・・・声は我慢 し・・」  耳を噛まれかすれた声に囁かれた。    立ったまま、背後からソイツが少年のそこに自分のものを入れているのだ。  「お前が・・・むり、や・・り」  こんなところでこんなことになったのはソイツのせいなのに。  「そうやね、でも、今、挿れてって、僕にお願いしたんは自分やで?・・・ええでほら、口塞いだるわ」  ソイツの言葉に少年は唇を噛む。  指だけでは足りなくて「入れて・・・」と確かに言った。言わされたのは事実だった。  顔を後ろに向けられ、唇を塞がれた。  その脈打つモノは少年の身体の奥まで入れられた。  そんな風に身体を開かれたら、もうスイッチが入ってしまう。  戸惑いや困惑や、怒りはどこかへ行ってしまい、ただ快楽を少年は追い求めてしまう。  舌を絡められ、反射的に応じていた。  少年は喘ぎ声を、ソイツの口の中にこぼしていった。  互いにの制服のズボンを下ろして、身体を繋いでいた。  学校のトイレの個室で、少年はソイツに抱かれていた。    動き始めたソイツのモノに喘ぎながら、少年はどうしてこうなっているのかが良くわからなかった。   でも、すっかり教えこまれた身体は、気持ち良さを貪りはじめる。  腰が揺れる    「気持ちいいなぁ、お前のここは最高や。やらしい穴や」  誉められるが、あまりうれしくない。  ソイツにセックスを教えこまれたのは、同意の上であるとは少年は認めたくなかった。  屋上で、気持ち良いオナニーを教えてやると言われ、つい・・・つい、気を許してしまった。  男同士でオナニーするのは良くあることだと言われて、そうなのかと納得してしまった。  性に対する知識があまりない、奥手な少年は、ソイツの淫らなテクニックに流されて、  オナニーどころか、男同士のセックスを教えこまれていた。  「こんなのオナニーやない、セックスやないか!」  と気付いた時にはもう奥まで挿入までされてしまっていて、しかも、ガンガン突かれてて、でも、あまりの気持ち良さにとことん流されてしまって。  どんなに怒ったところでももうしてしまったことは、どうにもならなくなっていて。  その日、散々ヤラれて抱き潰され、次の日目を覚ました後はソイツをぶん殴って帰った。  でも、そこは騙された自分の甘さだ、それに気持ち良かったことだし、と割り切って殴るのは一発だけにはしたのだが。  長い人生の中で一度くらいは男とセックスした、そんな事があってもいいと男らしく腹をくくって犬に噛まれたものだと諦めることにしたのだが。  なぜかその後、何度も身体を繋いでしまっているのが現状なのだ。  散々ヤラレた翌々日。  男らしく何もなかったことにしようと決めて少年は登校した。  男にとやっただけで、俺が男やなくなったわけやない。  俺の生き方に何もかわるもんはあらへん。  そう確信したからだ。  でも次の日は足腰立たなくて、情けないけれど学校を休んだ。  成績も素行も悪いけれど、学校だけは休んだことはなかったので少し悔しかった。  一応、卒業だけはしようと決めていたからだ。  家業を継ぐし職人には学校なんかいらないと思っていたが、「高校は卒業する」と死んだ爺さんと約束したからだ。  ヤラレたことを思い出せば、腹立たしさはもちろ んあるのだが、勃ちあがり、何故か穴がうずく。  あの気持ち良さも思い出してしまうのだ。  ヤりたい盛りの身体はどうしようもない。  身体がおかしくなる。  でも忘れるのが一番だと思った。  アイツをどうするかを考えた。  そして元々関わりなかったのだし、忘れて元にもどせばいい。  そう思った。  でも。  「可愛い、自分、可愛いわ」  何度もそう囁くかすれた声。  優しく髪や背を撫でた優しい指。  そう囁きながら見せた笑顔を思い出したら、何故だか少し胸が痛んだが、騙すようなヤツやと自分に言い聞かせた。  大体、男に可愛い言われて喜ぶわけないやろ。  俺の好みは可愛い女の子や。  無視することを決定した。  そう、あれは気持ち良かった。  気持ち良かったからだけや。  少年は自分を納得させた。    また上手いこと言われるか、どこかに連れこまれてテクニックで流されるんじゃないのかと思っていた。  だから、絶対にソイツには好きにさせまいと、固く決意して教室に入った。  授業が始まるまでのその時間、生徒達は机を離れ、それぞれ喋りあっていた。  ソイツはクラスメートたちと笑って話をしていた。  そこにいたのは爽やかで真面目な優等生。  少年を抱いたあの怖くて、いやらしくて、・・・でも、どうしようもなく魅力的な男はそこにはいなかった。  ・・・何もなかったんや。  少年は自分に言い聞かせた。  そして腹立たしかった。  俺は色々悩んだんや、なのにアイツは、何で普通にしとる。  ムカついた。  でも、もう関わらないと決めたことを思い出した。  少年は自分の席へ向かう。  「珍しいやん、昨日。休むなんて」  友人が言った。  素行は悪いが、人は良い少年は割と誰とでも親しい。   そう・・・アイツと以外は。  アイツとはあの日まで話をしたことがなかった。  「俺だって調子わる日ぃあるわ」  不機嫌に言う。  なんやねん、アイツ。  アイツこそ何もなかったみたいにしとるやんか、  と思いながら。    「おい、どうしたんや」   「なんやの」  クラスメートたちの声がした。  ソイツが持っていた教科書も何もかも放り出して、話していた友人達をその場に捨てて、こちらに向かうのが見えた。  「   !」  少年の名前を大声 呼ばれた。   かすれた声。  それは散々いやらしいことをささやき続けられた声で、少年の身体は熱を持つ。  あかん、考えるな。  それより何よりコイツ、何勝手に人の名前呼び捨てにしてんねん。  ばん、目の前に立たれ、机を叩かれた。  整った顔の目の下はまだ殴った跡で腫れていて、ええ気味やと思ったのだが・・・。  「   」  少年の名前をまた呼ぶと、ソイツは涙を流し始めた。  大勢の前で、全く気にせずに。  ボロボロと。  クラスがざわめいた。  少年は混乱した。  なんでやねん!!  泣きたいのはこっちや!!!   「僕は・・・お前が昨日来うへんかったから・・・僕は・・・僕は・・・」  ソイツは嗚咽した。  必死な目で見つめられていた。  涙があふれておちていく、ソイツの手が震えているのが見える。   ただただ少年は呆気にとられていた。  少年の中では男が人前で泣くということは有り得ないことだった。  それをコイツは簡単に。  そして、少年だけを見つめる目。  少年の中に侵入してくるその目。  ・・・怖くて、縛られてしまう目。  舌や指やアレみたいに、俺ん中に入って来よる・・・  少年はぞくりと身体が震えた。    セックスみたいな視線。  吐息が出そうだった。  そこで、正気に返った。  クラス全員が二人を見ているのに気付いたからだ。  優等生が不良少年の前で、泣きじゃくっているのだ。     人目も憚らず。  「このアホ教室で何してくれとんや!!」  少年は叫んで、ソイツを引きずって教室を出ていった。  とにかく、とにかく、コイツに言い聞かさなあかん。  コイツ、思ってた以上にイカレとる。  頭ええはずやのに。  屋上にソイツを引っ張っていく。 「お前、いい加減にせぇ!人前で何考えとんねん!」  怒鳴った。  屋上だ。  とりあえずここで話をしなければ。  引っ張ってきたのだ。  向かいあって話そうとしたら、  離した腕に抱きしめられた。  背の高いソイツの胸に抱き留められる。  「もう来うへんかと思った。・・・僕のせいで傷つけてしまったんかと思った・・・。学校辞めてしまうんかと・・・傷つけたんやったら・・・ゴメン」  かすれた声が震えながら言っていた。  「傷つけるつもりなんかなかったんや・・・好きなんや。ホンマに好きなんや・・・」  強く抱きしめられ、叫ぶように言われ、少年は呆気にとられる。  ガチの告白やないか!!  少年は真っ白になってしまった。  それは想定外だった。  ソイツが性の対象として自分を見ているのはわかった。  でも、まぁ、遊び半分というか、上手く騙せるバカとしてされたのかの思っていたのだ。  恋愛の概念がまだ薄い少年には、その可能性は考えていなかったのだ。  「好きや、好きや、ホンマに好きなんや・・・」  何度も繰り返される。  少年は真っ赤になった。  思考が停止した。  そんなん、聞いてへん。  「・・・そんなに嫌やった?僕とするん、そんなにつらかった?僕とするん?」  泣きながら、顔に涙を落とされながら聞かれたら、少年は困ってしまった。  嫌やなかったし。  つらいわけやなかった。  「そんなに僕が嫌いか?」  涙を流す、整った顔。  普段クールな取り澄ました顔が、こんなに感情にあふれていたら、どうしても、心が動かされてしまって。  「嫌い、やない」  そう言ってしまった。  「・・・ホンマやな」  苦しそうに言われたら、その苦しさを止めてやりたくなってしまって。  「ホンマや」  と少年は言ってしまっていた。   「・・・キスしてええか?」   そう囁かれた。  さすがにそれは・・・と思っていたら、返事を待たずに唇を重ねられていた。   返事、してへんやろ!!  そして、濃厚なキスをされ・・・。  思わず、ぼんやりしてしまい・・・。  自分からも応えてしまい・・・。  結論から言えば、また屋上で少年は最後まで抱かれてしまった。  流されまくっていた。    「自分から腰振ってるで、ホンマかわいいなぁ」  かすれた声が耳元で囁く。  うるさい、と少年は思う。  誰のせいや、と。    こんな、トイレでされてんのに、こんな学校でされてんのに、拒否出来へんような身体にしやがって、と。    ソイツのモノが 、気持ち良すぎた。  擦られてるのが良かった。  こぼれそうになる声を、ソイツの指が塞いでくれる。  「入れながら、胸触られんの好きやろ」  ソイツはシャツの下を探り、乳首を摘まんでくる。  ビクン、また身体が揺れた。  強くつままれたり、押しつぶされたら、少年はその場所を中心にして悶えるしかない。   中の良いところを容赦なく、ソイツのモノは抉ってくる。  「んんっ!」  くぐもった声を塞がれた手の中に出してしまう。  また、イカされた。  白濁がほとばしる。  「・・・な?気持ちええやろ?。もっと気持ちようなり」  かすれた声。その声か耳から脳を犯す。  可愛い、可愛い と言いながら、イったばかりの身体をさらに擦りたてる。  イくのが止まらない。   崩れ落ちそうになる身体を支えられる。  「あかん、しっかりして。・・・まだ僕はイってへんのやで・・・」  腰の動きが激しくなっていく。  口を抑えてくてれなければ、少年は大声で叫んでしまいそうだ。  学校に戻ってきて、泣いてるアイツに動揺して、また流されてサれてしまって。  そこから、好きにされてしまっていた。  まだ昼休みなのに、人の来ない使ってない旧校舎とは言え、トイレで身体をつながされていて。    昼休みや、放課後のソイツが部活にいくまでの僅かな時間に身体を弄られる。  トイレだったり、屋上だったり、実習室だったり。  口だけだったり手だけだったりもする時もあるが、絶対にされる。  拒否したら、人前でも気にせずされそうな怖さがソイツにはあった。  「なんで・・・家来てくれへんの?」  首筋を噛まれる。  でも、痕にはしなくなった。  前に痕をつけて少年が怒りまくったからだ。  「来てくれたらこんなとこでせんでええのに・・・」  それでも家に何度も誘われても行かない。  切なげにソイツは言ったが、僅かな時間でさえこんな好きにされてるのに、家に行ったら何されるか。  少年はおびえる。    視線だけで、ソイツから見つめられるだけで身体がおかしくなる。  見つめられていると、それが身体を犯す。  熱が貯まって。  そして、囁かれるだけ。  身体に手を当てられ、かすれた声が言う。  「ちょっと、ええ?」  そう云われたら、もう逆らえない。  連れて行かれた先で抱かれるだけだ。  クラスメイト達には、親友認定されてしまっている。  「いつからあんなに仲良くなってん・・・」  友人達には言われたが、仲良くなんかない。  ただ、身体を繋いでいるだけ、セックスしているだけだ。  でも、そんなことは言えない。   「・・・中で出さへんといて・・・」  少年は頼む。  「・・・わかってる。だしたいけどな。ここにだしまくって、尻からこぼれまくるのみたいけどな・・・あん時みたいに・・・」  切なく囁かれた。  抱き潰された夜を思い出さされ、身体が熱くなる。  思い出したくはない、思い出せばおかしくなる記憶。  何度も出され、噛まれ 、吸われ、舐められ。  足の指先までしゃぶられた、あの夜。   思い出す。それだけで身体がふるえた。    あかん、考えるな。    でも、今もソイツは少年の中にいて。  奥を犯され、少年は喘ぐ。  そこが好きだ。  ここで出されたい、とも思ってしまう。  穴が締まった。  「・・・何搾ってんの・・あかんやろ、出すところやったやろ、ホンマ、やらしいで、自分」  余裕なく言われた。  真っ赤になる。  身体があまりにも正直すぎて。  「僕ん家とまりに来てや・・・もっとしよ?」  囁かれる。  「嫌や、絶対・・・」  そんなん、また夜通しされたりしたら、もう自分がどうなってしまうかが少年には怖すぎた。  「・・・好きや。ホンマに好きやねん」  熱っぽくささやかれたら、またイッてしまった。  ソイツも出して少年の尻に精液をかけてイった。     粗い息が首筋にかかるのも。  温かい精液の感触も。  それらをいいと思ってしまう自分がどうかしていると少年は思った。  「こっち向いて」  向かいあってキスされた。  優しいキス。  「 ・・・好きや。大好きや」   真顔で囁かれた。    授業で寝るため机に伏せた。  いつものように後始末は全部アイツがしてくれた。  身体もタオルで拭かれている。  一時間しかない休憩昼休みは大忙しだ。  だからいつも、昼ご飯は午前中の休み時間の間に流し込んで食べる。   あくびする。  いつも寝ているが、さらに眠いのはシたせいだ。  寝てても先生に怒られない。  諦められているからだ。  大きな問題さえ起こさなければ、もう何も言われない。  アイツだけは、涼しい顔で授業を受けているのが斜め前で見えた。  席替えで、今では授業中見つめる立場にいるのは少年だ。  さっきまで、男の尻の穴をよろこんで舐めたりしていた奴には見えなかった。  クールなハンサム。  眼鏡をかけているので、真面目さが増す。    俺のこと好きや好きや言うけど。    それって何なん?  恋愛より先にセックスを、しかも男同士のセックスを覚えてしまった自分に頭が痛い。    こんなんあかん。  風俗にハマってる男と俺は何が違うんや。  金払ってへんのと 、好きな時にやられる位で 気持ち良かったらそれでええて、情けなさすぎるやろ。    少年は少年なりに苦悩していた。  気持ちええ。  嫌やない。  むしろええ。  でも、それに引きずられてしまってどうするんや。    少年は、ソイツをもう一度みつめた。  真面目な顔でノートを書いていた。  「良い成績さえとれば好きにさせてもらえる」  そう言ったいたのを思い出した。  真面目に勉強しなあかん理由がなんやあるんやろうな。  見つめている少年の視線に気がついたのか、ソイツは少し振り返り少年を見て笑った。  笑顔が優しい。  ドキリとした。  目をそらした。    好きや言われても。  どうしたらええかわからへん。      されるやらしいことは気持ち良くて。  ソイツはどうのこうの言っても優しくて。  腕の中で甘やかされるのは嫌いじゃなかった。  でもアイツ男やし。  男に抱かれるてそれ、男としてどないなん。  目を閉じて眠る。  逃げ出したくて。  女の子を紹介された  「巨乳や」  その一言が決め手になった。      「会う」  即答していた。   「まあ、お前みたいな奥手やったらあれくらい積極的な方がええやろ。そこそこヤリマンやけどな、根は純情やし、相手おる時は一途やし」    友人は笑った。  「経験豊富な一途な女の子。なんやその強烈なエロフレーズ」  少年は興奮してる自分に安心した。    ちゃんと、男や。オレ。  「男子校なんかにおるから、おかしなるんや!」  少年は叫んでいた。  友人が軽くひいていた。  「なんなん、お前・・・大丈夫か?」  「男子校なんかにおるから頭おかしなって来とったんや、ありがとうな、俺頑張るわ」   友人の手を握りぶんぶんふりまわした。  「頑張るって、いきなりヤるなや、ナンパやないんやし」  友人に忠告された。  いきなりヤルんはやっぱりないんや、そう思った。  アイツにはいきなりヤられた。  「・・・そうやんなぁ、いきなりヤルんはなぁ、ナンパとかでも好きとか言うん?」  いきなりの少年の問いに友人は呆れる。  「何の話や、当たり前やろ。ヤるためやったら何でも言うやろ」    その答えに納得する。  「・・・そうやんなぁ。何でも言うし、騙すしなぁ」  アイツだって、ホンマはそんなとこやろ。  好きや言われて、また流されたけど、よう考えたら、最初から嘘ばっかりやでアイツ。     「どないなん、お前。大丈夫か?」  心配された。  「大丈夫や!彼女つくるで!」   少年は気合いを入れた。   お父ちゃんとお母ちゃんみたいに、早よ結婚して、楽しい家庭築いて、仕事がんばって、爺ちゃんみたいな、母ちゃんみたいな、立派な職人になるんや。  アイツとそんな未来はないやろ。  男子校でアイツもおかしくなってるだけや。  男子校なんて制度廃止せいや。  少年は女の子の紹介を受けるだけなのにソイツが気になる自分がわからなかった。 [newpage]  また、流されてしまったやん、俺・・・。    明日女の子を紹介されると言うのに、また少年は準備室でソイツに抱かれてしまったのだ。  入れられ、喘がされて。イかされて。  自己嫌悪が半端ない。  どこかから鍵を手に入れ、ソイツは資料室を使うようになっていた。  未来の嫁さんになってくれるかもしれへん人と会う前に、コレって。  あかんやろ、俺。  膝を抱え、落ち込む少年を不思議そうにソイツはみつめた。  この後コイツは部活に行く。   陸上のスター選手だ。   元々住む世界が違う人間なんだ、少年は思う。  思い切る。  「どうしたんや、自分、今日おかしいで?」  そっと頬に手を伸ばされた。   指の優しさに胸が痛んだ。  罪悪感?    なんでや?  コイツもやりたいだけやし、俺もそうや。  こんなん、終わりにしなあかん。  「もう、せぇへん。今日で最後や」  ソイツの目を見て言った。  女の子と付き合うからじゃない。  やっぱりこんなんあかん。    「えっ・・・」  ソイツが固まった。  その目が少年の目に理由をさがす。  「お前は嫌いやない、それに気持ちええ。でも、それだけなんは嫌や。何で恋愛より先にセックス覚えてんねん。こんなんおかしい。散々しといてアレやけどな」  少年の言葉にソイツの目が死んでいく。  何で、そんな傷ついた顔するねん。  少年には分からない。  恋をした事もない。  だから、ソイツのそんな痛みも分からない。   でも、そんな目が胸に突き刺ささりはした。   「・・・行くわ」  少年は ソイツの手を頬から優しく外した。  その目を見ない。  胸が痛むから。  少年がいなくなっても、ソイツは立ち尽くしておた。  長い長い間。  女の子は可愛いかった。  巨乳だった。  どうしても照れてしまう少年にどんどん話しかけてくれて、少年も気がつけば、楽しく話せるようになっていた。  いわゆる不良の部類の女の子だから、派手ではあったけれど、明るかったし、気の強そうなのも良かった。  大体、少年の母親自体が若い頃は、女だてらに有名な不良だったわけで、少年には不良少女には全く抵抗がない。  爺ちゃんだって、入れ墨背負ってたし。  筋さえ通ってりゃええ。    女の子は筋も通ってそうだった。    これは運命かもしれん。  などと思い始めていた。  「ウチのこと、ヤリマンって聞いてるやろ」  女の子が公園のベンチに座った時言った。  少年は飲んでいたコーラを吐き出した。  「やっぱり 、アイツ・・・」  女の子が紹介してくれた友人に怒る。  「いや、でも、一途やとも聞いてるで」    少年はフォローする。  「・・・ヤリマンちゃうで。確かに気持ちええのに流されたりもしたけどな」  女の子がつぶやいた。  「わかってるて」  少年は言う。    そんなことを言えば自分だって。  流されまくって、抱かれてた、男相手に。  ちょっと思い出して赤くなる。  あかん、あかん、今思い出すな。  「・・・気持ちええだけなんは嫌になって、もうそんなんはやめにしたんや・・・寂しくなる」  女の子の言葉が胸に刺さった。  そうか。  そうやねんな。  俺は寂しかったんやな。  流されたあとの寂しさ。  これはほんまやないんや、て思ってまう。    ホンマやったらええのにとか思ってまう。   「・・・寂しいのは嫌やな。俺も遊ばれとって嫌やった」  少年は心の底から同意した。  「うん・・・遊んどった人の一人に、本気になりかけててな、でもそんなんが一番つらかった。言葉だけは色々くれるんや、だからやめた。ヤリマンちゃうで」  少女が笑った。  その切なさがわかった。   「・・・そうやな、自分めちゃくちゃエエ子やな」  少年は心の底から思った。  この子やったら、好きになれるかもしれへん。  ちゃんと好きになって、セックスだけやない、ホンモンになれるんかもしれへん・・・  「わかってくれるん?」  女の子は笑った。  その子が感じた寂しさや切なさはわかる。  そんな思いはさせへんようには出来る。  少年はそう思い始めていた。  「ほんなら次どこいこ」  少年は優しい気持ちになりながら、少女に言った。  その時だった。  「   !!」  デカい声で自分の名前が叫ばれた。  特徴のある、かすれた声。  公園の入口にソイツが立っていた。  背の高い、端正な姿。  普段は授業中しかかけない眼鏡をかけていた。  「・・・何でアイツおるねん・・・」  少年は呆気にとられていた。  「   !!」  またデカい声叫ばれた。    キョロキョロと公園を見回している。  「ええ 、もしかして、あんたよばれてるんちゃうん?」  女の子が言う。   少年は呆然とする。  アイツ何してんねん、何で人のデート邪魔しに来とんねん。  そして、ソイツは、少年に気付いた。  速かった。    さすがに陸上部のスターだった。  あっという間に少年の目の前にいた。  「   ! !」  目の前で名前をデカい声で叫ばれた。  なんやのんコイツ、なんでこんなことすんの?  「なんで、ここがわかってん」  少年は言った。  「自分の友達何人かしばいた。安心せい、すぐ白状したからそれほど殴ってへん、この辺やろて教えてくれたわ」  言ってることの意味が分からない。    優等生が不良仲間しばいたんか。  まあ、筋力的には圧倒的にコイツのが強いやろうけど。  「デートって何やねん、それがもう会わへん理由か!ふざけんな!」  ソイツはめちゃくちゃ怒っていた。  少年は少年でビックリしながらも、段々腹が立ってきた。  女の子だけが目を丸くしている。  「・・・なんでそんなんお前に言われなあかんねん!俺が誰とデートしよっても関係ないやろが」  少年の言葉にソイツが少年の胸ぐらを掴んで 引き起こした。  「関係ないわけないやろ!」  そんな乱暴な真似をされたことはなかったので少年はビックリしたが、同時にソイツの前で入ったことのなかったスイッチが入った。  「胸ぐらつかんどったら、相手は何もできんと思ってるんかい。アホが」  少年はソイツの腹に膝をめりこませた。  ソイツは呻いた。  「前から思ってたんや、お前、俺、なめとるやろ」  少年はさらに、わき腹に膝をめりこませた。  肝臓にいれる。  誰でも動きがとまる。  ソイツは座り込んだ。  「さっさと帰れや、アホ」  少年は冷たく言い放つ。  でも、ソイツは少年を掴んだ手を離そうとしない。  「離せやあほ、腕なんか簡単に折れるんやぞ」  少年は言った。  目が据わっていた。  苛立っていた。  散々人の身体を好きにしていて、このアホまだ足りんのか。  オレはちゃんと誰かを好きになりたいだけやのに。  邪魔すんな。  「離すわけないやろ、折りたかったら折れや 。でも絶対離さん」  すごい目をしてソイツが言った。  離す気がないのは分かった。  「・・・何でや」  折るか聞くかを一瞬悩み、少年は聞く方にした。  「・・・納得できるか。せっかくやっと自分と付き合えたのに『もうせえへん』で終わらされてたまるか!しかも他のヤツと付き合うためやなんて受け入れられるか!」  ソイツに叫ばれた。  少年は凍る。  誰と誰が付き合ってんねん。  「ちょっと待て、誰と誰が付き合ってんねん」  少年の言葉にソイツは怒鳴った。  「僕と自分やろが!」  その言葉に少年は完全に思考を停止した。  何でそうなんねん。  いやまて、そんなアホな。  「そんなん、俺知らんぞ!」  少年も叫び返す。  「僕はちゃんと好きや言うたぞ。それから自分はキスも何でもさせてくれたから、普通それ、もう付き合ってると思うんちゃうんか!」  ソイツも叫び返す。  女の子が頷く。  「・・・そうやな、普通そう思うわな」  「ええ、そうなん?」  女の子にも言われて、少年はうろたえる。  「僕を弄んだんは自分やろ!そんなん、認められるか!僕がどれだけ嬉しかったか・・・」  ソイツが泣いた。  また、泣きながら少年を抱きしめる。  少年は途方にくれる。  何、コレ、どないすればいいの?  俺が酷いことしたんか、コイツに。  弄んだの俺なの?  少年は困り果てた。   女の子が笑った。  「せっかく自分ええなぁ思ったのにな、自分の相手は遊びやなかったみたいやで、話しいや」   女の子は手をふり立ち去ってしまった。  少年はソイツと取り残されてしまった。  「・・・とにかく話しよ、離せや」  少年はため息をついた。  女の子は行ってしまった。  フラレてもうた。   ええ子やったのに。  巨乳やったし。  「嫌や絶対離さへん」   抱きしめたままソイツが泣きながら言う。     「ああ、もう、男が泣くなや・・・きしょいんや、ええから話、しよ」  少年が押すと身体は素直に離れた。     無表情な位に整った顔が、涙を流すのは見とれてしまうような色気があった。  指先で涙を拭ってやる。   「お前は俺が好きなんか、ホンマに?」  真っ赤になって照れながら聞く。  「好きや。ずっと言うてる」  ソイツは答えた。  「お前ヤらしいことしかせんやん」  「好きな子とおったら普通そうやろ 」  少年に言われソイツが答える。   「それもそうやな」  少年も納得する。  「逆に聞くわ、何で僕やったらあかんのや」  ソイツに聞かれて少年は戸惑う。  「なんか気持ちいいだけやったら嫌やとか言うてたけど、何で僕やったらあかんねん。何で僕と気持ちええだけやないようにしようとは思わへんねん」  「そやけど、お前男やし・・・」  「自分、僕でめちゃくちゃ気持ち良くなれるし、僕でめちゃくちゃイけるやん。男で何があかんねん」  そう言われたら、少年には断る理由がない。  確かに。  セックス的にはなんの問題もない。  むしろいい。  「俺ははよ結婚して家庭を・・・」    「人工受精や代理出産でも何でもある。自分が子供欲しいんやったら僕はなんとしてでも子供持てるようにする。外国行ったら結婚出来る。欲しいもんはなんや?何でも言うてくれ。時間かかるかもしれんけどなんとかしたる」  コイツ賢いけどアホや、本気で言うとる。  少年は呆れた。  「何で・・・俺なんや」  そこは気になった。  何でお前みたいなんか、俺なんや。  「・・・わからへん」  困ったように言われて今度は腹がたった。  「そこは普通なんか言わなあかんとこちゃうんかい!」  「わからへん・・・でもわかってるんは、お前が好きやと言うことや。絶対に離したないと言うことや!!」  「・・ ・僕を好きになってや、誰かを探しに行く位なら、僕を好きになってや。ちゃんとしたいんやったら僕とちゃんと恋愛しようや」  見つめられる。  真っ直ぐに言われたら、少年は断る理由が見つからなくて・・・。  見つめられたら、されてる時みたいに思考が奪われた。  コイツ人前でも平気やし、泣き叫ぶし、なんや頭ん中ぐちゃぐちゃになってきたで・・・  「僕は今ここにいて、自分のことが本気で好きなんや、いつかどこかのあやふやなもんやない、それこそホンマでちゃんとしとる。僕にしろや」  髪を撫でられる。   いつものように。  ずっとそうだったように。   「・・・俺、身体だけじゃなく、心も流されとる気がする・・・」    少年はつぶやいた。  「 それは、僕と付き合ってくれるってことやな?」  ソイツは少年を抱きしめた。   またぐちゃぐちゃに泣きはじめた。  「・・・そういうことにしてもええ」  諦めたように少年は言った。  何でこうなるのかがよくわからなかったが、もうそれで良かった。  知らん間に身体だけやなく、心の中まで入ってこられて好きにされてもうた。  もう、無視したり出来なくなってる。  切り離せなくなっている。  これが恋かどうかは分からないけれど、どの道逃げられないのだ。  追いかけて来られるし、確かにコイツから離れる理由もないのだ。  向きあってみよう。  少年はぐちゃぐちゃに泣いているソイツの背に腕をまわした。      「お前、泣いてばかりやなぁ、恥ずかしないの」  ため息をつく。  「泣いて自分が振り返ってくれるんやったらいくらでも泣くわ」  ソイツが言った。   「なんなんそれ」   少年は笑った。  ソイツの腕の中は確かに居心地良かった。    あの日以来の。  初めて最後まで抱かれた日以来のソイツの家だった。  「・・・やっぱり帰るわ」  ベッドの前で腰がひけた。   なんか、物陰でコソコソしてきたため、寝るための場所ですることがエロ過ぎるように思って、びびったのだ。   「・・・そんなん通るわけないやろ、同じ男やったらわかるやろ」  ソイツが低い声で言った。  様子がおかしい。  ここに来るまではいつになく、話なんかして、なんやええ雰囲気やったのに。  押し倒された。  服を脱がされる。  いつも服を着たまましていたので、それも恥ずかしい。  いつも甘い雰囲気なのに、ソイツがおかしい。  目が据わっている。  「・・・ああいう女が好みなんか?」  自分だけ裸にされていることも恥ずかしい少年にソイツは尋ねた。  「うん。おっぱい大きいし、可愛いし、ええ子や」      つい素直に答えてしまってから後悔する。  言わん方が良かったような・・  知らんけど・・・   「ふうん・・・」  ソイツはそれだけ言った。  無表情だが目だけが怖い。   「・・・やり直しや」  ボソッとつぶやかれた。  「え、何?」    少年は怯えて尋ねる。  「自分以外やったら誰でも僕の思い通りになるんやけどな・・・自分だけはうまくいかん」  苛立つようにつぶやき、それでも優しく指は少年の股間に伸びて、そこを扱きはじめる。    「ああっ」  少年は声を上げる。   手で口を抑えかけて、もう、声を殺さなくていいことを思い出す。   「あっ、はぁっ」    自分の声が出るとこういう声なのかを知り、少年は怯えた。  俺こんな声あげるんや。   なのでやはり口を塞いだ。  恥ずかしすぎた。  「何してんの?」    不機嫌だったソイツがそれを見てクスリと笑った。  「は、恥ずか・・し・・いやろ」    喘ぎながら少年は言った。  ソイツが笑ってくれたことにホッとして。  元々女の子が好きなのはどうしようもないのだ。怒られても困る。   「自分の声、聴きたいねん・・・聴かせてや・・」  手を口から外され、強く擦られた。  「あ、あかん、・・・出るっ ああっ、あか・・ん」  大声を上げて、出してしまい少年は泣きそうなる。     「可愛い・・・」   顔に何度もキスを落とされる。  「自分騙して抱いたやん?僕反省したんや。あんなに怒る思ってなかったんや・・・」  胸を弄られる。  摘ままれた。  また声をあげてしまう。  「あかん、思った。自分みたいなんは、本音でぶつからんと認めてくれんて思った。それに、自分、人ええやん?本気で好かれたり、本気で泣かれたら困ってしまうやろと思った。そこにつけ込もうって思ったんや・・・」  ん、コイツの言ってることなんかおかしいで。  なんかおかしい。  胸からの快感に喘ぎながら少年は思った。     「本気で謝ってお願いして、本気で泣いたら案の定、どんどん流されてくれて、付き合えたし、まだ怖がって家とか来てくれへんかったけど、このまま慣れてきたらなし崩し的になんとかなる思ってたのに・・・女になんかとられかけた。あり得へん、自分」  ソイツの言葉に少年は飛び起きた。  「なんやそれ!泣いたんも謝ったんも全部、計算か!!」  怒鳴った。  「計算やけど、言ったことも、泣いたことも、全部本気や!本気やなくてあそこまで泣けるか!自分を手に入れるためやったらどこででも、どうやってでもどれだけでも誰の前でも本気で泣いたるわ!」  ソイツも叫んだ。  少年は混乱する。  計算やけど本気ってどういうことやねん。  「・・・僕は自分が思っている以上に本気やって言うことや」  簡単にソイツは少年に説明した。  「ああ、そうか 、ありがとう」  少年は素直にお礼を言う。  ソイツはため息をつく。  計算して騙して少年を抱いた。   でも怒らせた。  だからアプローチをストレートに変えた。  それも少年以上にストレートに。  これならうまく行くと思った。  効果はあった。  でも 、あんなにストレートに伝えているのに、勘違いして 、女に走りかけた。  許せなかった。  「・・・僕が悪いねん。まだしたりんかったせいや」  ソイツの声の調子と目がやはりおかしい。  「女抱こうて考えさせてしまった僕が悪いねん」  ソイツは少年を抱きしめた。  「この身体に教えてやれへんかったからや。僕以外とする気がなくなるほど、やってやらへんからや」  危ういことをソイツが言い出した。  「いや、お前と俺が女の子好きなんは何も関係ないと思うで」  少年は危険を察知し、ソイツを宥める。  何されんねん俺。  コレ、ヤバい。  「・・・どれだけ僕が、どれだけ苦労して、どれだけ我慢して・・・ふらっと出てきた女なんかに持っていかれてたまるか!」  唇を塞がれた。  貪られた。  口ん中ぐちゃぐちゃに・・・されとる。  溶かされ・・とる。  少年の理性をもぎ取られていく。  唇を離され、ソイツは身体を確かめるような撫でらていく。  「自分も自分や・・・何で分からへんねん・・・自分のこと好きやから、ホンマに好きやから、閉じ込めて繋いで置きたいの我慢してるのに!」  理性を失いかけた少年にも、ソイツのセリフのヤバさが分かってきた。  俺、コイツと付き合うことにして早まったんやないやろうか。  コイツ思ってたよりヤバいんやないやろうか。  「セックスかて、嫌がるやろ思って、自分にしたりたいことの半分もせえへんようにしてんのに!」  そのセリフも怖かった。  半分て・・・。  残り半分どんなんやねん。  それは知らない方がいい気がした。   「今日はどんなに泣いてもやめたらん」  死刑宣告がでた。    「僕の本気を教えたる」  ソイツはそのかすれた声で、耳元でいやらしく囁いた。  少年はその声だけで、身体を震わせた。  恐怖か期待か、もう、分からなかった。  「まだや」  ソイツは言った。  「もう、許し・・てや・・・」  少年は泣いた。  まさか、この自分が人に許しを乞い、泣くなんてことがあるなんて・・・。  少年は信じられなかった。  でも、もう無理だった。  もう何も出ないのに、まだイカされ続けている。  「今」は肩に足を担がれ、向かいあって貫かれている。  もう、いろんな姿勢でいろんな角度から貫かれている。  「出ぇへんのに、出ぇへんのに」  少年は泣く。  また中を擦られる。  「・・・出さんでも、イケるやろ、気持ちようなり」  言葉は優しい。   でも、動きは容赦ない。  「あかん、・・て」   少年はまた身体を震わす。  出ない、でも、身体は痙攣し、長い長い絶頂が来る。  もう、気持ちいいを通り過ぎて、怖くて苦しいほどだ。  声すら出ない。    身体をこわばらせ、ひきつかせるだけで、まるで死ぬ前のような・・・。  このまま、し続けたら少年は死ぬだろうか。  ソイツはふと思った。  「やり殺したら、自分、僕だけのものになるんかなぁ・・・」  ポロポロとソイツが泣き始める。   それでも腰を少年に叩きつけながら。  「アホ・・・ならんわ・・・」  少年が呻いた。   睨んでいた。   「こんななってても、僕を拒絶するんか・・・」  ソイツの頭に血が登った。  殺してしまおう。  少なくとも、殺せば人のもんにはならん。  それだけでもええ。  ソイツは決めた。  絶対、苦しませへん。  気持ちいいまま殺してたるからな。  そう思った。  その時、少年が言った。  「お前が俺のもんになれ」  やり殺される寸前の、ボロボロの状態で、それでも傲慢に。  「お前・・・危な過ぎるわ・・・俺のもんになっとけ。そしたら、俺はお前と違って、壊したりめちゃくちゃにせえへん・・・俺のもんになって、安心しとけ」    真っ直ぐ見つめられ言われた。  その瞬間、頭が冷えた。  全てのものが繋がるような感覚にソイツはとらわれた。  どれだけ縛っても、閉じ込めても、不安は消えないだろう。  僕が僕のモノにしても、壊してしまうだけや、それやったら。  そうか。  そうなんか。  僕がお前分とのモノになってしまえばええんやな。  「僕が自分のもんなんか・・・」  「そうや、お前は俺のもんや・・・ホンマ危ないし、頭おかしいし、・・・でも、俺のもんにしたる。なれや・・・」  ソイツは笑った。  ゲイであることがバレたら家族には捨てられた。  元々どこかに属せるタイプじゃない。  孤独だった。  だから、大事な物が出来て怖かった。  少年は自分の大事なもんにすると言ってくれたのだ。  殺しかけたのに。  「ええで、僕は自分のもんや」  ソイツは微笑んだ。  生まれて初めての充足感だった。  欲しいものを手に入れても満足したことが なかった。  ずっと飢えていた。  人に手に入れられたかったのだ、と知った。  少年が真剣な目で見ていた。  強い視線。  全てを受け入れてくれようとしていた。  想いも、危うさも  「お前は俺のもんや」    そう宣言すると、少年は気を失ってしまった。  ソイツは少年を抱きしめた。  分かってへん。  コイツホンマに分かってへん。  僕がまたどれだけ好きになってしまったか。  本当に分かってへん。    泣けるほど嬉しかった。  計算ではない本気で泣いていた。  見せるためじゃない、見せなくてもいい涙が流れていた。   「僕はお前のもんや」  そう言えることが嬉しかった。 END   

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