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第一章・2

 実由は、販売課に配属された新人だった。  夕刻、売り上げの清算へ総務までやって来た時に、潮に声をかけて来た。 「あ! ガンダムのコーヒー!」 「え?」  デスクに置いていた、缶コーヒー。  キャンペーン期間中で、人気アニメ・機動戦士ガンダムのイラストがデザインされている。  まさか、こんな若い子が。  しかも女の子が指摘してくるとは、と潮は眼をぱちくりさせた。 「し、知ってるの?」 「パパが一生懸命あつめてるんです~。神崎さんもですかぁ?」 「え、いや。俺は、たまたま……」  実は嘘だ。  第一弾から始まって、すでに第二弾の15種類をコンプリートするのも目前だ。 「あ、お父さんが集めてるんだったら、これ、あげるよ」  未開封なので、汚いとは思われないだろう。  そんな風に考えながら、潮は実由にコーヒーを差し出した。 「いいんですか!? パパ、喜びます!」 「よろしく言っといて」

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