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第10話(R18)

 外山はいても経ってもいられなくて、スマートフォンを持って、のろのろとリビングのソファから脱衣所へ向かう。 「は……あっ……」  廊下の灯りが僅かに差し込む、暗い脱衣所の収納棚。  外山の性格を表すように用途別に洗剤や柔軟剤、整髪剤や制汗剤と並んでいて、鍵つきだが、鍵のかかっていないチェストがある。  外山はその鍵つきだが、鍵のかかっていないチェストを開けると、形や大きさの違うバイブが5本とディルド1本が姿を現す。 「(バイブは音が聞こえるかも知れないから……)」  本物の亀頭の形や陰茎の血管を忠実に再現したシリコン製ながら、万が一、誰かの目に触れた時に一瞬でそれと分からない黒一色のディルド。  外山はできるだけ音を立てずに着ているものを全て脱ぐと、ディルドを手にとる。そして、ディルドにローションをたらりとかける。 「あぁ……アぁ……」 「うっ……ンっ……」  外山、中田のどちらともつかぬ声がスマートフォンのマイクから聞こえ、グチュり、グチュりと先走りやローションの音が重なる。 「イ……くっ……」  外山の右手によって真っ黒なディルドを激しく自身のアナルへ出し入れされ、口元が小さく動きかけると、スマートフォンから中田の声が聞こえる。 「外山君……」 「えっ」 「好きだよ、とやま、くんが……」  中田の掠れた声が聞こえたかと思うと、外山の指が画面に当たったのか、中田の方が通話を切ったのか、中田の声は聞こえなくなった。  イきかけた外山はディルドを引き抜くと、自らの陰茎を乱暴な手つきで擦り上げて、強引に久し振りに与えられた快楽を終えてしまった。 『じゃあさ、俺とつき合ってくれない?』 『だから、俺とつき合って欲しいんだけどー!』 『外山君って俺のこと、あんまり好きじゃないでしょう』 『好きだよ、とやま、くんが……』  だが、中田にかけられた言葉の数々だけが異様に耳へ残って、外山は躰が熱くなる。 「おかしい……好きなんて冗談の筈、なのに……」  外山は複雑な思いで、通話の切れたスマートフォンを見ると、背けるように目を閉じた。

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