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第1話
今でも時折夢に見る。
『おいで』
柔和な笑みを浮かべる顔。差し伸べられる大きな手。
今でもその手を取ったことが正解だったか分からないけれど、彼以外に縋れるものなど当時の愛斗 にはありはしない。
『いい子だ』
震える指で掌へ触れれば、それをギュッと握られて、そこでようやく愛斗の目から大粒の雫が溢れ出た。
『よく頑張ったな』
むせび泣く華奢な体を抱きしめ、耳元で低くささやく声に、震えながら、戸惑いながらも、幼い愛斗の怯えた心は安心感に深く包まれたのだけど――。
「んっ…… うぅっ」
「起きた? 」
夢の途中、下肢を襲った鈍く緩やかな違和感に、重い瞼をゆっくり開くと、そこにあるのはいつも見ている綺麗に整った兄の顔。頷き返せば頬にキスをされ、髪を掌で撫でられた。
「いい子にしてたか? 」
「…… うん、してた。してたからぁ…… 」
寝起きで頭が上手く働かず、無意識に甘えた声がでる。
「本当に? 俺が帰ってきたのに、眠ってたみたいだけど」
「ちがう、それは…… 寝てたんじゃない」
愛斗は眠っていた訳ではなく、意識を飛ばしてしまっていたのだ。それを必死に訴えかけると、目を細めながら彼は笑う。
「マナは嘘吐きだな」
「嘘なんか、ついてな…… ひっ! 」
誤解を解こうと口を開くが、そんな愛斗を咎めるように、胸の尖りに取り付けられた細身のチェーンが引っ張られ、愛斗の体は魚のようにソファーの上でびくびくと跳ねた。
「軽くイった? 」
「やっ…… あぁっ…… んむぅ」
〝やめて〟と言いかけた愛斗の口を、唇で深く塞いだ彼が、片手でチェーンを軽く引きながら下肢へ掌を伸ばしてくる。
「ぐぅ…… ん、んぅっ」
アナルをみっちり埋めた玩具をズルリと一気に引き抜かれ、ポッカリと口を開いたそこへと外気が触れて愛斗は震えた。
「んぅ、 やぁ…… 」
「すぐに埋めてやるから、これ咥えてて」
一旦口を離した彼が、耳朶を舐めながら告げてくる。言われるがまま唇を開いて細いチェーンを歯で噛めば、ベルトを外す金属音が部屋の空気を震わせた。
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