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第3話

 今日はクラスの連中と帰る、と朝言われてもそれ程ショックではなかった。  まあ、そういう日もあるだろう。  皆でマクドで話をするらしい。  少し少年がすまなそうにしてたし、一緒に帰れないのが残念そうに見えたから、まあいいか、と思った。  こちらもひさびさ、友人達と茶でもしようかと思った。   「最近付き合い悪いんちゃう?」  女友達が言った。  「ホンマやで」  もう一人も女の子だ。  男の友達より女の友達が多いのは事実だし、何人かとはヤってる間柄なのも事実だ。  割り切った女の子ほど、良い女はいない。  男は嫉妬深いから友人にはあまりしたくない。  プライベートでは付き合いたくない方だ。  女好きの男はもっと勘弁だ。  ああいう男は女を憎んでいるとしか思えないので、苦手だ。  もっと、さらっと生きたい。  「本気で惚れてるねん。恋愛中」  言ってみる。  「マジか?真面目系の処女やろ」  友達が笑う。  「うん」  色々してるけど、まだまだファーストキスしか奪ってない。  何回もイカせてるけど。   「結局そういうのに落ち着くんやなぁ、嫌やわ。やらし。自分の色に染められるんがええんやろ?」  軽蔑される。  「サイテー!」  二人がかりで責められる。  「染まってるんはこっちやで。思う通りになんかなってくれへん・・・泣きそうやで。したいのに我慢してるし」  ソイツの言葉に二人が笑う。  「あんたが?」  「マジで?」  3人で一緒に寝たこともある仲だ。  「ホンマ、ホンマ・・・」  ため息をつく。   「でも、指はしゃぶってるやろ」  「間違いなくしゃぶってる」  二人に責められる。  ごまかせない。  性癖も知られている。  「今は指一つ触れてへんで、一緒に登下校してるだけや」  ため息をつく。  「可哀想に、指しゃぶりたいやろ・・・」  「指フェチやのになぁ・・・」  同情される。  今は指どころか、色んなモノをしゃぶりたいのだけど、それは言わない。  言ってもいいけど、少年が嫌がるかもしれないから言わない。   同性同士の関係はオープンにするのは相手の許可がいることくらいは知っている。  「可哀想になぁ、ウチの指しゃぶらしてあげようか?」  友人が言った。  この友人の指もなかなか美しい。  彼ほどではないけと。  指をひらひらされて、深い意味はなく、いや、あったかもしれない、指に食いついた。  舐めてしまった。  「はん・・・」    女の子が呻いた。  彼女の指なら舐めて、彼女の中に入ったことがある。  楽しかった。  後腐れもないし。  「あんたに舐められたら不思議やな、指でもクるわ・・・またする?」  誘われたがことわる。  したいのは一人だけ。  「なんか・・・見られてるけど、知り合い?」  もう一人の友達が後ろを指差した。  女の子二人つれて、騒ぐと目立つ。  騒ぎ過ぎてどこかの誰かの嫉妬を買ってしまったかと思った。  喫茶店の窓の外からソイツを見ていたのは少年だった。  マズい。  それくらいは理解できた。  女の子とお茶してるのも、今本気であることを証明している最中であることを考えればあまりよくはない。  でも、それくらいならまだなんとか。  でも、指を舐めていたのはヤバい。  キスより指を舐めることが性的な意味が高いソイツがしていることだからヤバい。  指は性器と同じであることを少年は知っているからヤバい。  少年は冷たい目をして、歩き去ろうとしてる。  「支払いしといて、後で返す」  ソイツは叫んで店を飛び出した。  少年を追う。  腕を掴む。  「誤解や。友達や。セックスはしたことあるけど」  そこは正直に言う。  「そうなん」  少年は冷たい。  焦る。  焦る。  「指舐めた。確かに。でもそれだけや。お前としてから誰ともしてへん、ホンマや」   往来なのを気にせず言う。  少年は真っ赤になった。    「ここではやめてや」  少年は言った。  「どこでやったら聞いてくれるんや。聞いてくれるまで言うで」   ソイツは叫んだ。  「聞きたないわ・・・もう、なんも。信じよ思たらお前そんなんやん。やめてや・・・辛いんオレや・・・」  少年の目から涙が流れた。  ソイツは凍りつく。   凍りつく。  泣かせてしまった。  「オレは、ちゃんとオレだけを好きな人と付き合いたいんや・・・」  少年が泣いていた。  泣いていた。  泣いていた。  「わかった・・・」  ソイツは言った。  分かってくれたと少年は安堵した。  一人で泣こう。  少し好きになってしまっていた。  これで良かったや。  これで良かったんや。  涙を拭って、ちゃんと別れを告げようとした瞬間、担がれていた。  「何すんねん、アホ!」  思わず怒鳴る。  「オレん家にいこ」  ソイツの声が明るい。  「泣くってことはお前、オレのこと好きやん。ほんなら、もう遠慮いらへんな」  何か言っている。  少年は意味がわからない。  焦る。  話の展開が・・・。  「わかったで、もう他の人の指舐めへん、どこも舐めへん。舐めんのはお前だけや。全身舐めるで、その代わり」  コイツは往来で何を。  下手なことを言えばとんでもないことをソイツが口走るのが分かっているので、少年は真っ赤になったまま黙る。  「お前、泣くくらいオレのこと好きやん。ほんなら両想いやん」  そういう解釈は少年の思考にはなかった。  そんな解釈があるとはおもわなかった。  「嫌われたんやと思って焦ったけど、嫌われてるどころか、泣くほど好きやなんて嬉しいわ」  そんなポジティブ知らへん。  少年は叫びたかった。  「オレん家や。オレん家。オレんとこ誰もおらんから、とことん可愛がったるわ」  嫌だと叫ぶことも許されず、少年は堂々と拉致されてしまった。  エレベーターの中から肩から下ろされて、キスされた。    指を撫でられながらするキスが腰に来て、立てなくされた。  抱きかかえながら、マンションの一室に連れ込まれた。  「おとんは来月まで帰ってこん。誰もおらん」  ささやかれ、ベッドに押し倒された。  指を舐められた。    「は・・ん、あっ」  思わず声が出た。  「チンポが疼くわ、たまらへんわ・・・」  呻くような声で言われた。  卑猥なセリフに真っ赤になる  指を舐めながら服を脱がされていく。  ひさびさの指への愛撫が気持ちよすきて、抵抗出来ない。  何より、そう、確かに。  すっかり好きになってしまっていた。  毎日迎えにくるし。  不器用なLINEは来るし。  大学に行ったら東京にいくと行ったら、自分も行くって言うし。  好かれるまでは触らないと言ったら本当に触らないし。  だから、分かってた。  あの女の子達と何かしてたわけではないって。  でも、あんな綺麗な女の子達がいるのに、多分あの子達ならもっと気軽にセックスできるのに。  自分なんかと思ったら、逃げたくなった。  逃げようと決めた。  でも、逃がしてもらえなくなっていた。  みっともない身体を見られている。  ガリガリの。  泣きたかった。  「エロい身体や・・・これ、今日からオレのや、俺だけのや」   囁かれた。  眼鏡を奪われた。  「そんなん、認めてな・・・」    言おうとした言葉は、唇をふさがれて言えない。  舌が唇を割り、舌を引きずり出され、絡められた。  恍惚とその舌を味わってしまった。  溢れる唾液をのまされる。  「オレのん飲んでくれるんや・・・可愛い」  囁かれるのが恥ずかしい。  「舐めたるからな、今日は全部を」   囁かれた。  乳首を吸われ、声を漏らした。  首筋を噛まれ、声を上げた。  そこを咥えられた時は悲鳴をあげたし、穴を舐められた時は止めてくれと懇願した。   もちろん止めてなどもらえなかった。  散々舐められ、泣かされた。  そして指をしゃぶられながらペニスを扱かれイった。  自分ばかりされているのが気になった。  いや、ほとんど同意がないのにされてるのにそんなこと気にすることはないのだけど・・・。  あれだけガチガチにしてたら辛いだろう。  いつものように手でしようと指を伸ばしたら、その手を掴まれ、舐められる。  「ダメ。今日は先にお前ん中で出す。それやからあかん。お前の指でされるめちゃくちゃ好きやけどな」   囁いて、指に歯をたてられたら、身体が震えた。  「あかん・・・指やめて・・・あかん」  泣く。  こんなとこがこんなに感じるなんて。  「お前もう、指がチンポになっとるやん」  クスリと笑われて泣く。    恥ずかしかった。  慌ててなだめられる。  「それがええんや、ホンマにええんや・・・」  必死で宥められた。  「そんなんがええ言うん、お前だけやん・・・」  オレは嫌やの意味で言ったのに、ソイツの目つきが変わった。  「オレだけでええんや。・・・他とはさせん」  指を唇を咥えられ、唇でしごかれ、少年は軽くイってしまった。  それが恥ずかしくてまた泣く。  なんて身体にされてしまったのか。  「可愛いから、ホンマ可愛いから」  さらに慌ててなだめられる。    「オレだけでええんや。・・・オレだけで。だから今日はここに入れるで。全部オレのにする」  優しくキスされ、この日のために用意していたらしいローションを穴に入れられ、そこに指を挿れられ解される。  慣れない感覚に呻けば、指を舐められ、気を逸らされた。     「入らない、そんなん無理」  そう何度も言ったのに、ソイツのデカいそれを入れられて泣かされた。  「抜いて」      痛くて泣きながら叫んだのに、抜くどころか、そこで動かれた。  慣れないそこではまだ快楽はわからなくて。  舐められ、しゃぶられる指だけが、分かりやすい快楽だった。  それにしがみつく。  「・・・後ろでも気持ち良くなれるからな、練習しような。指だけでここまで気持ちようなれる、お前や。後ろも絶対気持ちようなって、めちゃくちゃ感じられるようになる」  囁かれた。  嫌だと少年は思った。  これ以上身体を作り替えないで欲しかった。  「ここもまだ開発してへんし」        胸も吸われた。  そこには、確かな快感を感じ、あえぐ。   「胸あかん、変になる・・・」  少年は泣いた。  「くそ、たまらんわ!!」   ソイツは呻く。  激しく動かれ、圧迫感と痛みに少年は泣く。  でも痛みだけではないものも感じ初めている。  「なあ、オレのこと好きやろ?」  囁かれた。  首を振る。   そんなことも確かめず、抱くのが腹立たしくて。  「・・・好きやろ」  焦った声で囁かれ、激しく動かれる。  痛い。    でも痛みだけじゃない。  でも痛い。  「好きちゃう・・・」  痛みに顔を歪めて言う。  ああ、でも何かがくる。  「あかん、そんなん、あかん。言うてや・・・好きって言うて・・・」  泣きそうな声で言われ、追い上げられていく。  何を勝手な、と少年は思うが、喘ぐ。  まだ後ろだけではイケないから、前を扱かれる。  「お願いやから言うて・・・オレのこと好きやろ?」  髪を撫でられ唇を顔中に落とされ、囁かれる。  「好きじゃない」  そう言おうとした。  でも、ソイツがあんまり泣きさうな顔するから。    こんなんひどい。  好き放題して、嫌って言ってるのに、痛いのに、突っ込んでるし、なんで身体を揺さぶられてるのかもわからへんし。  それが少し、気持ちようなってきてるし。  指舐められたら気持ちいいし、胸とかも変にされてるし、  こんなんオレの身体やない。  こんなん、こんなん・・・。  酷い、怖い。  「好きやろ?」  ソイツが聞いた。  ソイツの唇が震えているのがわかった。  少年は痛くて、でも、気持ち良かったりするのがこわいけど、コイツも怖いのがわかった。  気持ち良くて、止められなくて、でも怖いのだ。  オレが好きだから?  少年は震えた。    中で動かされる感覚が。  明らかに痛みだけではなくなってくる。  「・・・嫌いやない」  それが精一杯だった。  「そうか」  ソイツはクシャリと笑った。  嬉しそうに。  指が優しく舐められた。  唇の中で挟まれ動かされるのは、本当に指がペニスになってそうされているみたいで。  「ああっ・・・いいっ」  思わず呻く。  先を甘く噛まれたら、身体が震えた。   これは指や。  指のはずやのに。  ホンマにここが・・・あれみたいになってる。  音を立てて吸われた。  「気持ち・・・ええ・・・ああっ、もっと・・・」  とうとうそう言わされていた。  「ええんやな・・・。もっと気持ちようしたるからな」  ソイツは優しく囁いた。  「怖いから・・・こんなん気持ちええん、怖いから・・・」   正直に打ち上げ、泣いたら、何故かさらに身体の中でデカくされて。  「もう、身体おかしいせんといて、お前に触られたらおかしなる・・・」  そう泣いているのに、何故かソイツが止まらなくなって。  中で熱いモノが爆ぜる感覚に声を上げて。  それでも、また動かれて・・・。、  中でイケるようになるまで、されつづけた。  何度も指に口付けられて。  それでもイった。  その指で扱かされた。  キスをしながら、ソイツを指でイかせた。   指とペニスがこすれるのは、まるで、ペニス同士が、こすれあうみたいでそんなのに感じた。   ソイツを擦っているのに自分が感じた。  ソイツが達した後、指を噛まれた。  気持ち良すぎて、射精した。  「・・・すっげー、エロすぎるやろ」  ソイツは呻いた。  指は気持ち良かった。  触れても触れられても気持ち良かった。  指はソイツを受け入れるもう一つの器官だった。  何時間そうしていたのかわからない。  やっと終わって、ベッドで動けなくなっていた。    「好きやで」   囁かれ、少年の手に唇が落とされた。  「オレの指、がやろ」  少年は憮然としながら言った。  「指も、や。指だけちゃうで?」  一生懸命ソイツは言うが、指を離さないから真実味がない。  「顔も好きや。声も可愛い。大人しいように見えて、強情なんも好き。すぐ逃げるんが追いかけたなって好き。LINEとか、無視したらええのにちゃんと返してまうとことかが好き。めちゃくちゃエロい身体も好き」  色々言われて真っ赤になる。   「ちゃんと好きや。エロいこともいっぱいしたいけど、それだけやない。分かって・・・」  囁かれた。    分かってる。  本当に好かれているのは分かっている。  でも、綺麗な女の子達。  あの女の子達も綺麗な指で。    「好きやで・・・ホンマ。ベッドの中でも強情なんとかたまらへん・・・泣かせてすがりつかせたなる、めちゃくちゃ燃える」  抱きしめられた。  「・・・他の人」  少年は言いかけてやめた。  「言うて。オレを好きになるのを怖がらへんといて」  顎をつかんで顔を覗かれる。   「始まり方が間違ったけど、ホンマに好きや。大丈夫や、ちゃんと好きやから」  目を合わせて言われる。  だから少年は逃げられない。  「怖い。エロいことされんのも。お前に好かれんのも。どこがええんかわからへんけど、もっとええ指あったらお前そっち行きそうやし、綺麗な女の子に囲まれてんのにオレなんか・・・。オレはお前と違う。他なんかないんや・・・」      震える声で言う。  惨めな本音。  「・・・他なんかあってたまるか。お前に他なんかあらへん。オレ以外見るんやない。そんなん言うな・・・オレ苦しくなる」  抱きしめられた。  コイツも苦しい。  それは・・・。  何故か安堵した。    「・・・お前の指好きや。すごい好き。でも、お前の指やから好き・・・そこも分かってな」  囁かれた。  そこは素直に納得できなかったが・・・。  巨乳の女の子が、巨乳マニアの彼氏と付き合えば こんな気持ちになるのだろうか。  色々複雑だった。  でも、ちょっとだけ。  初めて自分からソイツの胸に顔をうずめた。  「可愛い」  ソイツが嬉しそうに言った。  「可愛い、言われてもオレ男やうれしない」  そう言いながらも、しがみついた。  「・・・オレ、死ねるわ・・・。セックスよりな、こんなんが嬉しいなんて初めてや」  髪を撫でられた。  「オレは・・・セックスかて初めてや・・・ずるい・・・」    悔しかった。  「ええ、ええ。オレだけ知っとけ・・・」  その言葉はやたらと甘い。  「好きやで・・・ホンマ」  でも、やはりずるいから答えてやらない。  今はまだ。  「嫌いやない」  それだけ言う。  「・・・ホンマ可愛いわ」  ソイツは左の薬指に口付けた。  思わず呻く少年にソイツは微笑む。  「・・・指輪、人にさせたい思うんわかったわ。あれって貞操帯やねんな。つけたらここ噛まれへんなるやん」  ソイツは囁いた。    「そんな風に考えるんはお前だけや、変態」   少年は呆れた。  ソイツは聞いてない。  卒業したら指輪を贈ろう。  ソイツは思った。  これはオレの指だから。  END    

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