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オマケ 星の夜

 「女の子紹介したるわ、とりあえずやってみて相性良かったら付き合ったらええねん、気楽に、いこ」  その馬鹿が彼に言っているのを聞いた時、頭に血が上った。  この馬鹿は彼に汚い女を紹介していた。  どんどん相手を取り替えるヤツは男であろうと女であろうと汚い。  彼をそんな女に触れさせるのかと思ったら、この馬鹿を殺そうと思った。  彼が汚れるのが耐えられなかった。  近づくなと言ったのは俺やけど。  他を探せと言ったのは俺やけど。  言葉も嘘、身体も嘘。  明日になれば、違う心と身体になる嘘だらけの人間達と、同じように彼がなってしまうのが耐えられなかった。  嘘に汚れる。  汚される。  お前はそんなヤツやない。  その場でそう怒鳴りつけたかった。  でも、俺は彼にそういう資格はない。  彼を拒んだんや。  彼を愛せないから。  愛するわけにはいかないから。    それでも身体も心も彼を求めていた。  でも、そういう訳にはいかない。  俺の愛は・・・彼の思っている愛とは違うから。  俺の愛は彼を焼いてしまうから。    でも、汚い人間に彼が汚されるのは耐えられなかった。  父も汚い。   好きだけど汚い。  俺の知りうる中で、彼だけが綺麗だった。  生きている人間の中では。  だから、彼が立ち去った後、その馬鹿を捕まえて怒鳴りつけた。  その場で女への約束をキャンセルさせた。  ダメだった。  彼が汚されるのが耐えられなかった。  触ったんも、抱いたんも・・・。  殺したくなかったからやった。    彼が汚される位なら殺してしまっただろう。  そのくせ、彼が離れようとしても、許せなくなってしまった。  もう触らなくていい。  他の人を探してと言われて、耐えられなくなって彼を抱いた。  手放すことなど出来なかったから。  触れるのを止めることなんて、もう出来ないと悟ったから。    愛しても殺してしまう。  彼が汚されるくらいなら殺してしまう。  彼が離れても殺してしまう。  彼ならその瞬間でも俺を見つめてくれると知っているからだ。  命のなくなるその瞬間まで。  愛せないのに、離せない。  俺は酷い。  俺が一番汚い。  俺は彼しかさわらん  でも、彼が誰かを触ったら?  俺には彼に誰かを触るなと言う資格さえないのだ。    他の誰かを触らないで。触らせないで。  俺の願いは言葉になることはない。  ただそうなった時、彼が誰かに触れた時、どうなるのかは知っている。  俺は彼とその相手を殺すだろう。  それは愛ではなく単なる憎しみで。    愛しても殺す、離れても殺す。  酷い。  本当に酷い。  でも、この前彼は、ふと口にした。  買い物のお願いでもするような気軽な感じで。  「・・・俺も、お前しかもう一生、触らへんから」  さらりと皿を洗いながら言われた言葉に、俺は俯き泣いた。  何も答えず。  彼に背を向けて、部屋から出ながら泣いた。  彼は適当なことなど言わない。  いつだって。    彼はなんもかんも全部くれたのだ。  何一つ与えない俺に。    俺はお前を愛さない。  なにがあっても愛さない。  お前に本当の俺は見せない。  俺は俺からお前を守る。  俺は星のように彼を見る。  俺達の間には決して届かない距離かある。  距離があるからこそ、星に手を伸ばせるのだ。  触れられるものなどではないからこそ星に手を伸ばすのだ。   遠く離れた安全な場所にいて。  本当の俺が触れられない場所に。  俺がお前に安心して手を伸ばせるように。    星はとても美しく綺麗で。  俺は手を伸ばさずにはいられないのだ。  END  

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