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第1話 魔王と光の勇者(魔×光)
勇者は負けました。
「あ、ぎぁ、がっ、ひぃっぎぃ」
ぐらぐらと身体を揺らされる度ブジュリと濡れた音が響き、身体を中から引き裂かれ続ける痛みに声にもならない音が口から漏れた。
引きちぎられた下肢を守るはずの防具はゴミのように床に転がり、ぼろ布になったズボンが絡んだ色の白い足が無様に揺れる。
「……なかなか慣れぬものだな」
低く地を這うような声の後、麻痺させられて指すら動かない俺の太ももを背後から掴んでいた真っ赤な肌と鋭い爪が生えた大きな手が脚を大きく開いた恰好の俺の身体をズルリと持ち上げる。
「あ、ぎぁっ」
ぐじゅりと腹の奥の奥、内臓を食い破った熱い杭がずるずると俺を身体の中を引き裂きながら滑り出す。
「ぁっがっ、もう止めっ」
死ぬ。
壊れる。
何度頭の奥で叫んでも勇者に選ばれた時に国お抱えの魔法使い数人がかりで植えつけられた身体の傷を魔力の続く限り回復させる為の魔紋がゆるゆると壊れた内臓を傷一つない状態に回復してしまう。
ジクジクとした終らない痛みと苦痛。
普通ならば強い魔力を持った勇者といっても魔力が枯渇すれば傷は治らなくなるのに俺を責め続けている魔物の王が戯れに魔力を魔紋に注ぎ続けているせいで身体は壊れた端からすぐに治り、また壊されることを繰り返している。
痛みに狂いたくても片手間に新しく首に植え付けられた精神の異常を回復する為の魔紋が狂うことすらも許さない。
「我を受け入れよ」
「あっ、ぎぃっ、がっ」
ぐじゅんと沈む身体に合わせてまた身体の奥が引き裂かれ焦点も合わない見開いたままの視界が真っ赤にそまり頭が痛みで火花を散らす。
「我がツガイ……」
「が、ひぃぎ……ぁぐ」
ぐっと開いた足ごと太い腕に抱き込まれぐちゅりと腹の奥から鈍い音と終わらない激痛が走り抜けた。
ゴフリと開いたまま悲鳴だけが漏れる唇から赤い血が滴る。
「……ふむ」
低い吐息の後、硬い髪が首を撫でたことさえ気づかないうちにビリッと強い痛みが首から走り抜けた。
そして、どろりとした自分のものではない熱い焼けた飴のような魔力が噛みつかれたらしい魔紋から流れ込み、俺の身体も魔力も染めていく。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
痛みではない苦痛に身体の奥の痛みすら忘れて声を上げる。
注がれた魔力を飲み込んだ魔紋が腹を裂いたままの太い杭を包み込むように俺の身体を最適な状態へと作り替えていく。
切り裂かれる度に僅かずつ修復され柔らかく広がってしまった俺の腹の奥が今までの激しい動きが嘘のように動きを止めた太い杭へとねっとりとしゃぶりつく。
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