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おまけ

 伊吹に告白こそしたが、恋人としての触れ合いはまだ先かと思っていた。  それは、俺が学生だからと言うのもあるが――伊吹の過去を考えると、怖がらせるんじゃないかと思っていたからだ。 (いや、まあ……『そういうの』が全部怖かったら、そもそも変な噂は立たないだろうけど……でもなぁ)  一方で、俺と話すまでに一年かかった。何が良くて、何か駄目なのか。まずは、そういうことを知っていこうかと思っていた。 「……へー君、好き……」 「ちょっ……そこで、喋ん、な……っ」  全部、過去形なのは――遊びに来た伊吹の家で襲われて、その、咥えられているからだ。 (いやいやいや……何? AV? いや、男同士だから……って、そうじゃなくて!)  ジーンズを、下着ごと脱がされた。そして驚き、固まっている俺に伊吹は言う。 「……おれは、準備出来てる……あとは、へー君の準備が出来たら、出来るよ?」  舌を使い、絡めながら伊吹は器用に喋る。  ……目は伏せているが、何だか縋るように見えて――俺は、伊吹の頭を撫でてやりながら言った。 「うん、しような……初めてだから、うまく出来なかったらゴメンな?」 「い、いいのっ!?」 「あぁ……言っただろう? 俺は伊吹が好きで、もっと触りたいって……まあ、バレバレだと思うけど」 「……良かったぁ」  何しろ、舐められてすっかり臨戦態勢である。内心、頭を抱えている俺の言葉に、口を離して顔を上げた伊吹がふにゃっと笑った。  ……その安心した顔を見て、俺は脳内だけで完結していたことを反省した。こんな形で知ったのは何だが、伊吹には態度で示さないと伝わらないらしい。  そんな俺をベッドに誘い、全裸にしたかと思うと――同じく服を脱いだ伊吹が、俺に跨ってくる。 「い、いや! ゴムしよう!?」 「え? へー君、紳士……うん、解った」  そして、そのまましようとする伊吹を何とか止めて。嬉しそうに頬を染めつつ、用意しておいたゴムをつけて貰った昂ぶりに伊吹は腰を落としていった。  ……拓かれ、貫かれながらも、伊吹はその細い腰を沈めるのをやめなかった。 「深……やっ、と……繋がれ、たぁ」  吐息と共に呟きを落として、伊吹が嬉しそうに笑う。それにつられて、俺の頬も思わず緩んだ。 「ああ……待たせて、ゴメンな?」  騎乗位という、童貞にはかなり刺激の強い初体験だったが――俺はそう答え、即暴発するのだけは何とか堪えた。 ※  今日、おれは利平と結ばれた。  大切にしてくれているのは解ったけど、頭が良くて見た目もなかなかの利平は、実は隠れた人気がある。他の相手に取られるなんて、冗談じゃない。 (既成事実、あるのみ!)  驚かせたけど、退かれたり萎えられたりしなくて本当に良かった。 (初めてじゃなくて、ゴメンね……でも、おれの最後の相手はへー君にするからね)  母親は、仕事でまだ帰ってこない。  一人夕食を食べながら、俺は固く心に誓った。

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